Heroic Legend -序章の黒-
□第4話 "ボク"と"オレ"
3ページ/6ページ
――――…。
ボクがまだ小さかった頃、ママがシッポウシティの博物館に連れていってくれたんだ。
初めて見る化石や古代の文献は、幼いボクにとっては魅力的で面白かった。
「ママー、ひとりでみてまわってもいい?」
「えぇ、でも遠くへ行っちゃ駄目よ」
「はぁーいっ!」
それから、一人であっちこっち見て回って、ボクは興味深い石を見つけた。
…黒くて、ツルツルしただけの石だったけど、それがとても美しく…綺麗で、…少し寂しい感じがした。
「きれい……」
思わず石に触れてしまった。
その時、ボクの中に『何か』が生まれたような気がした。
ボクは少し怖くなって、ママの所に戻った…。
それから数日が経った。
ボクはいつも通り、チェレンとベルと遊ぼうと、近くの公園に行こうとしたら、いつもより早く来すぎて二人を待っていたんだ。
すると、いきなり口を塞がれて身動きがとれなくなったんだ。
必死に逃れようと暴れるけど…、
「〜〜〜ッ!」
「大人しくしろ、このガキ!」
とか言われて、地面に押さえつけられたんだ。
その時だったんだ。
声が聞こえたのは……。
《大丈夫だ、オレが何とかする》
「え…だれ…?」
《オレはお前の味方だ》
「み…か…た……?」
《あぁ、心配するな。…だから……オレに『替われ』》
その時、ボクは宙に浮くような感覚を感じた。
「へっ、急に大人しくなりやがって…。最初からそうしていれば―――」
「――……なせ」
「あぁ?」
「…離せってんだよ、このバカが」
とても、不思議で怖い感覚だった。
だって、自分の身体がボク以外の意思で動いていたから…。
ボクの身体はそこにいるのに、ボクはここで見ているだけ…。
傍観者のような気分だった。
『ボク』が何をしていたのか、最初から最後まで、映画のスクリーンを観ているような感覚で、記憶に焼き付いた……。
「―――…わぁぁんっ……!」
気が付けばその感覚が戻っていて、でもその間の記憶ははっきりしていた。
ボクはあまりの怖さに泣いた――――…。