ひろいっく☆れじぇんど
□例え道に迷っても
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ピンポンパンポーン♪
『迷子のお知らせをいたします―――』
ここは、とあるショッピングモール。
典型的なチャイムの後に、これまた典型的なアナウンスが鳴り響く。
コイツは…迷子のお知らせか。
「コレを聞いてる迷子、早く家族の所に帰れよ」
誰に言う訳でもなく…そう呟いた俺。
アナウンスは、迷子の特徴を述べている。
『――――オレンジ色のコートを着た男の子が、迷子に…』
オレンジ色…レインコートか?
しかし…今日は雨も無く、爽やかな秋晴れの空だ。
風変わりな迷子だな。
『…―――オレンジ色のコートを着た"ヒョウガ君"、お連れ様が探しておられるので…』
ここで俺は、口に含んでいたお茶を吹き出してしまった。
その光景は、霧吹きのアレと対して変わらない。
「…迷子って、俺かよォッ!」
空になった空き缶をゴミ箱に放り投げると同時に、俺は赤面しつつもダッシュで迷子センターへと向かった。
―――――――――――
「ヒョウガ、やっと見つけたよ」
「ネク、お前…何してくれてんだよ…」
ゼェゼェと肩で息をしながら、俺は目の前にいる薄紫のパーカーの少年に向かって、文句を言う。
しかし、息切れで上手く言葉が出てこない。
「何してんだよって…、お前を見付けるのが面倒臭いから、呼び出してもらっただけだけど」
ネクはしれっとしながら答えた。
「だからって……迷子センターはやめろよ…。お前は俺の事、何歳に見えてるんだよ…」
「え? 迷子センター?」
ネクはきょとんとした様に、放送室の看板を見上げる。
そこには、
《まいごセンター》
と、デカデカとした文字が書かれた看板が掲げられていた。
「…あっちゃー。やっちゃったぜてへぺろ☆」
棒読みでセリフを言い、全く反省していないネクに若干イラッと来たが、そこは大人の余裕って奴で見逃してやる事にする…、
「…けどさ、お前の精神年齢が7歳位だから丁度いいんじゃないか?」
「そんなに幼くねぇよっ!」
…のは無理だったので、いつもの感じで言い争いが始まった。
そして、これまたいつもの感じで、唐突にネクが…
「やめよっか」
とか言い出したので、この衝突は無かった事扱いにされるのだった。
俺達は、センター内をブラブラと歩き回る。
今日は"普通に"買い物をしに来たのだ。