Heroic Legend -序章の黒-
□第1話 出会いは旅の始まり
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ピピピピピ……。
マメパト型の目覚まし時計の機械音が部屋に鳴り響く。
カチッ。
綺麗で清潔感漂うベッドの布団がモゾモゾ動いて、布団から出てきた手が目覚ましのスイッチ(マメパトの頭)を押した。
そして、少し動いた後にムクリと起き上がった。
あちこち跳ねている真っ黒な長髪に、曇りの無い蒼穹のような瞳は眠りにつきたそうに閉じかかっている。
ぱっと見、中性的で幼い顔立ちの少女だ。
「眠い…」
一言呟くと、横にグラッと倒れ、ぬいぐるみのように床に落ちた。
「フォリア、フォリアー!」
下の方から、女性の声がした。
どうやら少女を呼んでいるらしいが、当の本人は爆睡中。
声がしなくなると、階段を急いで掛け上がる音がして、ガチャリと部屋のドアが開く音がした。
「フォリア、いつまで寝て……って、まーた変な寝方して…」
茶髪の長い髪を束ねた女性はフォリアと呼ぶ少女に近づき、よいしょと身体を起こした。
「ん…ぁ? ママ………おはよ…」
フォリアが寝ぼけ眼(まなこ)で、女性に挨拶をする。
「おはよ…じゃないわよ、また変な寝相で…」
「ごめんね…」
母が呆れながらフォリアを見れば、フォリアは欠伸をしながら謝る。
「そうそうフォリア、これ」
と、母が渡してくれたのは、緑のリボンで可愛い感じにラッピングされた青い箱だった。
「……何これ…?
シュークリーム? ケーキ?
ボクとしてはミルフィーユが良い………」
「まだ寝ぼけるか、このアホ娘」
コツンとフォリアの頭を叩く。
蒼穹の目がパチリと開き、フォリアは母を見る。
「ママ、アララギ博士からの小包は?」
「今持ってるでしょうが」
と言いながら箱を指差す。
「わぁ…ついに来たんだ…この日が………っ」
フォリアは確かめるように、ギュッと箱を抱き締めた。
勿論、潰れないように。
―――やっと来た………、この日をどれだけ指折りしながら待ち焦がれていたか……。
フォリアは嬉しさにもう一度、じっと箱を見る。
「嬉しい?」
母がフォリアに尋ねる。
フォリアは力強く、
「うん、とっても!」
と頷いた。