Heroic Legend -終章の白-
□第73話 悲痛の訴え
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「あれ……?」
【どないしたんや?】
「出口…何処だっけ?」
【…】
†
ボクは自力で部屋を抜け出す事に成功し、なんとか見覚えのある場所まで帰ってきた。
どうやら、ここからデスカーンの棺に入れられたらしい。
あの頭痛は、デスマスの《ナイトヘッド》だとアーテルが言っていた。
英雄の魂に反応し、ボクにあの声が聞こえたのもそのせいらしい。
…とは言え、流石に怖かった。
暫くはシンボラーやデスカーンには会いたくはないと思う。
そんな事を考えながら歩いていると、向こうに人影が見えた。
しかもかなりの長身の人間。
(Nか…?)
そう予想しながら興味本位で人影に近付いていった。
それが迂闊だったのを、次の瞬間に後悔する事になる。
(あ…ヤバい)
人影がボクに気付いて近付いて来た。
今更歩くのを止めたら怪しまれると思い、目を凝らしながら歩く。
そして、その姿を確認できた時に、上のセリフを放った。
「これはこれは…長旅お疲れ様でした。
どうです、ワタクシの同士達は? なかなかの強敵でしたでしょう?」
「…別に。アックス一匹でストレート圧勝だった」
夏は暑そうだが、今の季節は暖かそうなマント。
くたびれた若草色の髪に赤い細目、右目はステンドグラスのようなモノクル。
今のボクがこんな外見になった元凶が、にこやかにそこに立っていた。
「しかし、その割には随分と遅かったですね…。
何か、驚きの秘密基地でも見付けましたか?」
「あぁ…とびっきりの秘密基地をね」
「それは良かったですね…。
例えば…黒き英雄、縁の場所…ですか?」
「…!」
小さく上げそうになった悲鳴を、なんとか喉元で抑える。
何で…何で?
何で知ってるんだよ…!?
「『何故その事を!?』…という風に考えていますね?
本当に、アナタは素直な方だ。すぐ顔に現れる」
ゲーチスは愉快そうにクックと笑った。
逆にボクは、背中に嫌な汗を感じている。
「そう警戒しないで下さい。
その部屋の存在は、昔ライラックから聞いていましたから…」
あぁ、そうか。
父さんと同じ研究チームで…。
嫌な事を思い出し、殴りたい衝動を抑えながら睨み付ける。
「クク…良い目ですね。
素敵な色に染まっていますね、髪も目も」
「…っ、貴様…ッ!!」
今、自分は短気なのだと思った。