Heroic Legend -間章の灰-
□第54話 憎しみの理由-ワケ-
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Nと共に戦う事を選んだあの時、オレはアルや仲間達に別れを告げに行ったんだ。
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【ジーク、行くなっ!】
【悪いな、アル…】
【ジーク、大事。人間の所、行く。
ワタシ、許さないっ!】
【アル…】
オレを必死に引き止めようとするアル。
ずっと共に生きてきたオレと離れる事は、身を切られるように辛い事だったんだろうな…。
オレも同じ気持ちだったが、それを跳ね返してでもNと共に行く事を選んだ。
【アル、オレも辛い。けど、オレは人間達に分からせなきゃいけない。
これ以上、お前やオレのような奴を増やしちゃいけないんだ…って】
【ジーク…。ワタシ、どうすればいい?
分からない事、ジーク、いつも教えてくれた。
これ、最後。
教えてくれたら、もう、止めない】
【アル…。すまない…】
オレはアルに"強くなれ"、とだけ言った。
アルは満足げに礼を言うと、仲間と共に快くオレを送り出してくれた。
プラズマ団に戻ってから、オレはNの傍を片時も離れた事は無い。
アイツを守る為に、他のポケモン達と戦いの訓練もやった。
Nはオレ達が戦うのをあまり快くは思わなかったが、ポケモン解放の為と甘んじて受け入れながら、オレ達を見守ってくれていた。
†.
それから数年の月日が流れ、オレやN達の所に一人の人間がやってきた。
ソイツはまだ子供で、ゲーチスが"奇跡の癒しの能力(チカラ)"を持つ人間だと言っていた。
ソイツは孤児院から連れてこられた、所謂普通の人間の子供。
初めて会ったのに…すぐにNに懐き、『N兄様、N兄様』と呼びながら、何処にでもくっ付いて回るような奴だった。
まぁ、オレからしたら最初からアイツが気に入らなかったけどな。
アイツ…ライカはポケモンと人間の傷を癒す能力を持ち、プラズマ団が保護してくるポケモンの治療をやっていた。
大抵の奴はアイツの治療を喜んで受けた。
アイツも、治療するとゲーチスやNに褒められるから、自分から怪我をしたポケモンを追い掛け回して治療している程だった。
…けど、Nと昔から一緒にいるオレだけは…アイツの治療を一切受け付けなかった。
…というより、生理的にアイツが嫌いだった。
あの、治療した後にNに褒められるアイツの顔が嫌いだった。
まるで…褒められる為にポケモンを治療しているような感じで、あの大嫌いで嫌らしい人間と同じに見えたんだ。