Heroic Legend -間章の灰-

□第42話 目覚めない意識
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そんな有り得ない話をどう説明したって、真に受けるどころか…相手にだってしてもらえないだろう。

だから黙っていたのだ。

この話は、目撃者達の胸の内だけに存在し続けるしかないのだ。


母親は、その目撃者達の集まる………自分の娘が眠っている病室の前まで来ると、少し深呼吸をする。

「…よし」

自分の気持ちを整理するかのように呟き、病室のドアを開けて中に入った。






「キリアさん、先生の話は終わったんですか?」

病室に入ると銀髪の青年、ヒョウガが母親に話し掛けてくる。

キリアは「えぇ」と頷いてから、娘が眠るベッドへと近付いた。


ベッドの傍には娘の幼馴染みの二人が、心配そうに娘の顔を覗き込んでいた。

金髪のボブショートの少女はエメラルドの目を潤ませており、アホ毛とメガネが印象に残る黒い短髪の少年は、椅子に座って幼馴染みの様子を見ている。


「ベル、チェレン、毎日お見舞いに来てくれてありがとうね…」

キリアが弱々しく二人に笑い掛けると、金髪の少女…ベルが首を横に振る。

「…フォリアが目を覚ますまで……また三人一緒に再出発できるまで…旅をしないって…あたし達、決めたんです」

続いてチェレンと呼ばれた黒髪の少年が、メガネの奥にある決意を固めた様な瞳で話す。

「僕達の大切な幼馴染みがこんな状態だっていうのに、旅を続ける方が無理ですよ。
せめて…目が覚めて、回復するまではカノコに留まっているつもりです」

「…そう、ありがとう。
多分、フォリアも喜んでいるわ…」



それから夜までいたが、結局…この日もフォリアが目を覚ます事は無かった。

今日はもう遅い…と言う事で、全員解散になる。
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