Heroic Legend -序章の黒-
□第32話 対決、冷凍コンテナ
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そう言い残して行ってしまった。
【…相変わらずやな】
「まぁ、いいんじゃない? あれがチェレンなんだしさ」
「ふーん…なーんか行き急いでいる感じだな」
青年が意味ありげにポツリと呟く。
「あ、そう言えば名前聞いてないんだけど…」
「え? あぁ…忘れてた」
【…忘れてた、じゃないだろ…】
青年の方からポケモンの声が聞こえてきた。
ボクは思わず、
「ポケモンも呆れてるよ?」
と、言う。
すると、青年は少し驚いた顔をしていた。
「…へぇ、ディーの気持ちを理解したのか?」
「いや…凄腕トレーナーって自称してるから、手持ちがいるんだよね?
…それで名乗るのを忘れたら、大抵呆れるって思ったし…」
「あ、なんだ…そゆ事か。俺またてっきり、何で手持ちの話もしてないのにコイツらの気持ちが分かったんだろう…って思っちまった」
何故か残念そうに首を振る。
「…大分話が逸れちゃったけど、改めて自己紹介だね
ボクはフォリア。カノコタウンから来たんだ」
「カノコかぁ…。タウンマップでしか見てないが、随分遠い所から来たんだな?
…俺はシアン。カントーって地方から来たんだ」
「カントーって…外国だ」
「まぁ、この地方の人にとっちゃ、外国と変わりねぇな」
そう言ってニッコリと笑うシアン。
「オイ、そこの女二人。さっさと探しに行け。話なら後にしろ!」
ヤーコンさんがボクとシアンの頭を軽く叩いた。
シアンは「いってぇな…オッサン」と言いながら頭を擦るが、ボクは威力が強過ぎて前のめりによろめいた。
「ヤーコンさん、酷いですって…え、女二人?」
他に誰かいると思い、周りを見る。
ハァ…と溜め息をつきながら、ヤーコンさんはシアンを顎で指した。
「コイツの事だ。一発で女だと気付くだろ?」
「え…?」
…確かに。
よく見れば胸もあるし…身体のラインも細い。
正真正銘、女の子だ。
「ごめん、男に見えた」
すると、シアンはクックッと笑った。
「やっぱ引っ掛かったなっ!」
「やっぱ?」
「だって、ワザと自分を『俺』って言ったりこういう喋り方とかしてるんだぜ?」
「はい? …また、どうしてそんな妙な事するの?」
「うーんとな…」
シアンはしばらく考えるような仕草の後、ニッと笑って言った。
「楽しいから」
「楽しい?」