Heroic Legend -序章の黒-
□第32話 対決、冷凍コンテナ
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しかし、これが功をなしたようで、今にも言い争いをしようとしていた二人は、酷く驚いたようにビクッと跳ねた。
奥に引っ込みながらトウヤはそう言った。
「…ビックリした。君って大人しそうな雰囲気出してて、意外と荒々しい感じなんだな」
「いつもこんなんじゃないんだけど…」
青年の呟きにツッコミつつチェレンを見る。
「…」
片方の耳を押さえて痛そうな顔をしていた。
まぁ、あんな近くで大声(しかも2倍)を出せばキツいもんな…。
「チェレン、無事かい?」
「…鼓膜が破裂するかと思った…」
「そりゃ、そうだね」
「…その声を出した張本人がサラリと流すな」
メガネの位置を直しつつ、文句を垂れるチェレン。
「さっきのはボクじゃないって…」
「言われなくても分かってるよ。ただ愚痴っただけ」
もう一回、さっきの三倍のボリュームで叫ぼうかな…。
そんな事を考えていると、ヤーコンさんが「まったく…」と溜め息をつく。
「どいつもこいつもロクでもなさそうな奴ばかり集まりやがって…」
「まぁ、良いじゃん」
青年が両手を後ろにやって笑う。
【良くないっての】
すかさずランプルがツッコんだ。
「まぁ、とにかく…。街中に逃げたプラズマ団を捜せ
そうだな…奴らを見付けたらジム戦への挑戦を受けてやる。お前ら、ワシと戦う為にここへ来たんだろ?」
「む…無茶苦茶な依頼だ…」
「僕もさっき聞いたけど、本当に無茶苦茶だ」
ボクとチェレンがポツリと文句を言うと、ヤーコンさんは不機嫌そうに腕を組んで、こう言い放った。
「だったら、ワシとは戦わないと言うんだな?」
「いや、言ってないですって…」
「じゃあ、捜せ。人生はギブ&テイク!
…金を出して品物を買うように、何かを失って何かを得る事が出来なきゃ、旅なんざ続けられる訳が無いだろ。『タダ』で手に入るものは、殆ど自分の為にはならん物ばかりだからな!」
…それは言えている。
それにプラズマ団を放っておいたら、寝覚めも悪くなるし…。
「…分かりました。プラズマ団を放っておいたら、何するか分かりませんからね!」
「僕は言われなくてもやりますよ。メンドーな連中を倒しつつ、強くなれる…
一石二鳥ですからね」
《まぁな、弱いくせにすぐ喧嘩を吹っかけてきやがるからな…》
トウヤもそれに同意する。
「そうと決まれば…」と、チェレンがスタスタと先へ進んでいく。
「僕は先に行く」