Heroic Legend -序章の黒-
□第17話 苦しみの中で
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「本当にごめんなさい…」
「もういいよ、気が動転してたんだから…しょうがないさ」
泣き止んだ時に、殴って投げ飛ばしたのがヒョウガ君とチェレンだという事に気づいて、さっきからずっと謝っていた。
「…しっかし、久しぶりに食らったな……フォリアのパンチ」
先程、治療してもらった絆創膏の付いた頬に、手を当てながら呟くチェレン。
ヒョウガ君は受け身をとって、無事だったらしい…。
「あの時は、もう頭の中が……ぐちゃぐちゃで、それで……」
「もういいよ、フォリア」
チェレンがボクの頭をポンポンと撫でながら言った。
「フォリアって、意外にパワフルな子なんだね!
俺、昔柔道とか空手とかやっててさ…女の子に投げられたの初めてだ…」
「ヒョウガ君も、ごめんなさい」
ベッドに戻され、その上でペコリと謝る。
「いいよ、フォリア。ヒョウガはキミの事を誉めてるんだから」
ネク君がヒョウガ君を小突きながら言う。
「そーそー。後さ、年結構近いんだし、『君』付けと敬語は無しなっ!」
「う、うん。…分かった」
ヒョウガ君…ヒョウガの元気な話し振りに、少し流されて頷いてしまった。
「ボク…夢を見ていたんだ…。すごく怖い夢」
そう、思い出したくもない…10年前の事……。
「それって、カノコに来る前の事?」
勘の鋭いベルが遠慮がちに聞いてくる。
ボクはそれに静かに頷いた。
……今なら…話せる気がする……。
静かに深呼吸をしながら、話し出した。
「ボクはね…ポケモンの声を聞く事が出来るんだ……」
…。
しばしの沈黙。
「それ…本当なのかい?」
アロエさんが真面目な顔で聞いてきた。
あのおちゃらけた表情だったアーティさんでさえ、真面目な顔をしている。
「はい…」
と頷いた。
「……だったら、確かめさせてもらうよ」
チェレンがそう言って、ポケモンを繰り出した。
ベッドの横にあった図鑑を手に取る。
「…レパルダス」
あのチョロネコが進化したのか…。
「誰か、トランプ持っている人?」
チェレンが眼鏡を押し上げながら言う。
「あ、はぁい。あたし持ってるっ!」
ベルがカバンからトランプを取り出した。
なんだか埃っぽいケースに入っている…。
チェレンはトランプを受け取ると、カードを切り始めた。