Heroic Legend -序章の黒-

□第10話 VS チェレン
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不振に思って振り返ると、三人の人間が追いかけっこをしていた。

しかも、二人くらいは見覚えのある服装をしていた。

追いかけられている方は、マトリョーシカのような服装のプラズマ団の下っ端でもう一人は……

「こぉらぁーっ! まぁちなさぁぁーいっ!」

運動は苦手だがとってもタフな女の子、ベルだった。

矛盾してるけど、事実なのだ。

「おらっ、退け退けぇーっ!」

下っ端はボクらを押し退けて走っていってしまった。

その拍子にボクは倒れかけたが、ジャルルが蔓で受け止めてくれたので、助かった。

「ハァッ…ハァッ……ハァ……」

ベルは息切れをしながらボクらの前まで来ると、膝に手をつく。

その後ろからもう一人、小さな女の子が今にも泣きそうな顔をしながらついてきた。

「ベル、大丈夫?」

ボクはとりあえずカバンから『美味しい水』を出して、ベルに渡す。

ジム戦の前に渡されたものだ。

「あ、ありがと…」

ベルは水を一口飲むと、プラズマ団が逃げていった方向を見て、悔しそうな表情になる。

「……もう、なんて逃げ足の早い人なのっ!」

「ベル、何があったか詳しく教えてくれないか?」

チェレンが落ち着いて質問をした。

「実はね、さっきこの子がプラズマ団に絡まれていたの…。
でも、あたしが止めようとした時にはもうこの子のポケモンは取られてて……」

「それで走って追い掛けたら、僕らと鉢合わせした…という事か……」

「うん…」

ベルが頷くと、ついてきた女の子がベルのスカートを引っ張って、注意を引いた。
女の子は目に涙を溜めて、今にも泣き出しそう…。

「おねぇちゃん…あたしのポケモン……」

ベルは女の子の肩に手を置いて、明るい感じで話す。

「大丈夫! あたしが必ず取り返すから!」

ベルの表情は、偽りの笑顔でとても苦しそうなのが伝わってきた…。

「…ベル、キミはここにいて待ってて」

「え、フォリア?何を言ってるの?!」

目を丸くするベル。

「その子のポケモンはボクが取り返しに行くから、ベルはその子のそばにいてやって」

「でも、フォリア一人じゃ、危険だよ!」

ベルが食い下がる。
すると、さっきまで黙っていたチェレンが口を開いた。

「…誰がフォリアを一人で行かせると言ったんだ?」

「チェレン…」

「メンドーだけど…プラズマ団みたいな奴らは許しちゃおけないな……」
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