鋼短編 《Doze》
□いい夫婦の日。
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「いい夫婦の日……あー、そういうことか。」
蘭の言葉に、エンヴィーも本から顔をあげる。
顔はなんだか得意気だ。
「ボクもうこの先の展開読めた。これフラグだよね?バカな作者の事だから、このままボクと蘭がいちゃつくパターンだろ。ハッ、その手には乗るか!」
「…………」
「…………え、なに?なんなのその冷めた視線。」
「…いや、エンヴィーって幸せな頭してるなぁ、って。」
そばにあった紙をしおり代わりにして本を閉じると、蘭はヤレヤレとばかりに頭をふった。
「誰が悲しくてエンヴィーなんかと夫婦ネタやんなきゃいけないの。ラストさんに抱きついていいよ券もらったってお断りだよ。」
「失礼だなアンタ!じゃあなんで夫婦の日とか言い出したんだよ!」
「ん?…ああ、ちょっとだけ気になって。」
「は?なにが?」
「誰と誰がベストカップル…というか夫婦か。」
蘭の言葉を馬鹿じゃない?と一蹴しかけ、エンヴィーは、はたと口を閉じた。
「…確かに。ちょっと気になるかも。」
「でしょー?てなわけでさっそくいってみよー!」
「…ごめんなさい蘭ちゃん、もう一度言ってもらえるかしら?」
聞き間違えちゃったみたい。と麗しく微笑むラストに見とれつつ、蘭は元気よく頷いた。
先程プライドにすげなく断られ、これ以上断られるわけにはいかないのだ。
お父様なら間違いなくうんといってくれるだろうが、正直別に求めてない。
(そう!これはラストさんだから頼めることなんだ……!)
「エンヴィーと夫婦になってください!ラストさん!!」
「…は?蘭アンタなにいって…ギャァアアアア!?いいいいたいいたいいたい!!!」
突如横から上がった叫びに横を見ると、なぜかラストの爪がエンヴィーの頭を突き刺していた。
「ふふ…いったいどうしたの、蘭ちゃん。いきなりそんなおかしなこと言い出して。」
しかしそんなことなど微塵も感じさせない穏やかな笑みを浮かべるラストに、蘭の背筋がぞわりと粟立った。
これは、まずい。
だが、ここで諦めるわけにはいかないのだ!
(──そう、連載夢主の名をかけて!!)
キッと顔をあげると、ラストの顔を見つめる。
「あ、あのですね、ラストさんは美人で、エンヴィーも服着て髪まとめて一回死んで性格矯正して黙っていれば美形じゃないですか。」
「え、それもう別人だよね!?」
「馬鹿でアホで救いようのないエンヴィーですけど、見た目的にいい感じなのでお願いしたいなぁ、と。」
お願いです、といってじっと顔をみつめる。
「どうしても…見てみたいんです……!」