鋼短編 《Doze》
□いい夫婦の日。
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冬の寒さも少し和らぐ昼の事、珍しく空は晴れ渡っているというのに、エンヴィーと蘭はリビングでだらだらとくつろいでいた。
「…………なーんかさー…」
広げている本から視線は上げないまま、蘭はゆるく口を開いた。
「うーん……なんていうかねー……あれだよねー……ほら、なんていうの?なんかこう………ねぇ?」
本を読みつつダラダラと意味のない言葉を重ねる蘭に、エンヴィーは大きくため息を吐いた。
「はぁ…何が言いたいんだよ。ボク本読んでるんだけど。」
「ああ、美容体操の本新しいの買ったんだっけ。読み終わったら貸してよ。………あれ?ナニ言おうとしてたんだっけ?」
「…老化?もうボケてきてんの?大丈夫?」
「そんなことないし!まだ肌とかピチピチだから!」
「それって死語じゃない?」
「うるさいなぁ…だからエンヴィーはヒロイン扱い…………あ、そっか。」
思い出した、と、パアッと顔が明るくなる。
「今日さ、いい夫婦の日なんだってさ。」