黒子のバスケ

□緑の兎の独り言
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全中制覇、それを成し遂げた俺達にはいつの間にか奇妙な名前が付いていた

“キセキの世代”

畏怖の念をこめて……

「化け物!!」
「天才に敵うわけねーよ」
「何であんな奴らがいるんだよ」

俺達が天才?化け物?才能?
そんなものだけで俺達はやってきたと思っているのか?


ふざけるな!!


毎日赤司の地獄メニューをこなして、居残りして練習して……ただそれだけだった
ただ、ひたすら人事を尽くしていただけだった
勝手に諦め、努力を止めたお前たちが勝てないのは当たり前だ


そして、お前達も同じだ
自分の世界に閉じこもり、周りを見ず、ただ力に溺れる


嫌いと言いながら勝つたびに微笑を浮かべていたのは誰だ?

やっと熱中できるものを見つけたと犬みたいにはしゃいでいたのはどこの馬鹿だ?

バスケ馬鹿で、ひたすらボールを追いかけ、一番楽しんでいたお前はどこにいったのだ?

俺達と一緒にいるのが楽しい、この時間がいつまでも続けばいいと願っていたのは誰なんだ?



誰よりもひたむきに努力して、バスケを愛していたあいつが辞めた理由がわかった気がした



「……」
「……なんなのだよ、いきなり呼び出して」
「……何故、テツヤはあのタイミング辞めたんだろう?」

ここはバスケ部の部室だ
本来すでに引退した俺達は来るはずがなかった
しかし、赤司が俺と話したいとか行ってきたためとりあえず、今の主将となった後輩に貸してもらった

「……わからないのか?」
「ああ、思い当たらない」

赤司は額を抑えため息をついた

「俺はお前たちを勝利へ導いた、なのにテツヤはあんな顔して僕を否定した」

赤司が一番変わったと思う
一人称も俺ではなく僕になり、口調もしぐさも奇妙なほどに変わった
俺達への呼び方も名前呼びになった

「……まあ、今のお前には、お前達にはわからないだろうな」
「真太郎?」
「お前も青峰も黄瀬も紫原もきっとわからない」
「……」
「桃井や後輩たちはたぶん気付いている、あいつを一番見ていたのはあいつらだ」
「なんだと……」

赤司の言葉を聞く前に俺は席を立ちドアに手を駆けた

「お前たちは……俺もかもしれないが自分の世界に閉じこもって吠えているだけだ、だからこそ」



「絆を忘れ、周りを視ることも忘れた」



「黄瀬は黒子を探して走り回っているようだが、きっと見つけることはできないだろう」



「まあ、負けるまでせいぜい独りの世界で踊り続けていればいい」



パタンッ



これが正しいことだとは思わない
俺も自分の力を信じ、人事を尽くす
それだけだ
ただ、無性に腹が立った
俺達に勝つことをあきらめた周りに
力に溺れ、変わってしまったあいつらに
変わってしまったあいつらを見ているしかできない自分に







―緑の兎の独り言―


いや、ただ寂しかったのかもしれない





あいつらと共に過ごした日々がこんなにも楽しかったとは思わなかった


  
 

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