短編

□you and me
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「どこに行く?」


『…任務です』



また始まった、こう思い始めたのはいつからだったかな

私が外に出ようとすると必ずと言っていいほどサソリ様は私を見つける
まるで私を四六時中監視してるかのように



「アジトから出るなと言ってるだろ」


『任務ですので、』


私がそう言うと顔つきは一変して冷淡な表情が歪んだ


「っ、あの糞がッ、殺してやる、ぜってぇ殺してやる」


怖い、そう感じるようになったのはいつだったかな


少しして頭が冷えたのか冷静さを取り戻したサソリ様


「いいか、その任務は俺が行く。お前はここにいろ」


それだけ言ってアジトを出ていこうとするサソリ様
いつもこの繰り返し

でも、今日は違う。私が一歩前に踏み出すから


『待ってください!』


精いっぱいの大きな声で呼び止める
でもそんな私に反応することもなく足を止める気配も一向にない
それでも私は思いをぶつけた


『私は、サソリ様の部下ですッ、サソリ様をお守りし、暁のためにこの身を捧げるのが私の役目です!』


「黙れ」



殺気のこもった言葉に体が震えたが必死に最後の言葉を言い切った


『ッ、私は、私はサソリ様の傀儡じゃないッ!!』


「黙れッ!」


ゴッと鈍い音をたてて私の身体は地面に崩れ落ちた
左頬が熱い、殴られたと思ったけど平手打ち
どっちにしろじんじんと痛む頬は変わらない
私はゆっくりと起き上がった
こちらに歩いて来るサソリ様を見て静かに目を閉じた
私の前までくるとサソリ様は私を抱きしめた
さきほどまでとは打って変って壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめてくる
これもいつものこと。私を傷つけたあとは愛しそうに抱きしめる
わけがわからない


「頼むから、ここにいろっ」


悲痛な声、私は黙ってサソリ様の背中に腕をまわして抱きしめ返した


いつから変わってしまったの?
何をそんなに怯えているの?
私が好きだったサソリ様は強くてカッコよくて、意地悪だけど優しい人

誰が変えてしまったの…?



わ、たし…?



「行ってくる」


『…気をつけてください』


「あぁ」



サソリ様を見送った後、体に力が入らなくなりペタリと地面にお尻をつけた


私が隣にいることであなたを変えてしまうなら、こうするしかないじゃないですか


『サソリ様、』


あなたは不死身の人形なんかじゃない、永遠の存在でもない
あなたはちゃんと人間の心を持ってる
だって私を愛してくれたもの
ただ、愛し方を間違っただけ


”どうかまた会うときは笑って会えますように”

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