その後の彼等

□サクラサク
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正十字学園に春が来た。



大通りの桜並木が、雨にも負けず凛と立っている。

まるで、支え合っているようだ、なんて、俺らしくも無いことを考えていた。

場所はファウスト邸内の理事長室。

相変わらずの書類の城が、城壁つきで鎮座している。

「何を見てるんです?」

『ああ、メフィ君。なんか、雨の中のサクラってのも風情があるなーと。』

「・・・そうですかねぇ?」

『んー。自分で言うのもなんだけど、年寄りくさい感慨だったかも。俺も年かなー。』

「中身も外見も未熟な貴女が年寄りなわけが無いでしょう?それに、それを言ったら私はどうなるんです?」

『ひーおじーちゃん?』

「瑠璃・・・」

『うそうそ、ごめんて。それに、メフィ君ならどんな姿でも愛してみせるよ。たとえ君が怪物だったとしても。』

「嫌な比喩ですね・・・。」

クスクスと困ったように笑うメフィスト。

『まあ、真に化け物なのは俺のほうなんだけど。なにせ、現聖騎士にも認められた正真正銘の化け物だからな、俺は。』

「またそんなことを言って・・・ハァ、まったく貴女はいつもそうですね。本当はとても傷ついているのに、なんでもないように笑って、つまらない冗談を言う。」

『んー?そーだっけ?ま、母さんの教えに”苦しく哀しい時ほど、優雅に微笑み、くだらぬことを言え。次も、その次も、またその次も。死ぬときまで”ってのがあったな。』

「・・・お母様は”され竜”まで読んでおられるのか・・・。」

『ギギナさんマジ生ける武神ー!俺はそこまではいけないけど、ずっと追いかけていたいなーとは思うよ。』

「・・・・・そろそろ行きますか☆」

サクラは咲いた。・・・雨も降った。

何もかもあの日と同じだ。

獅朗が死んだあの日と同じ、憎らしいほど俺の心を鎮静する、冷ややかな雨。



『獅朗、燐が候補生になったよ。処刑されそうになったりそれが保留になったりいろいろ大変だけど、まあ、元気にやってるみたい。あとね、・・・俺達、付き合うことにしたんだ。実を言うと俺、結婚するときは獅朗に神父役をやってもらいたいな、なんて思ってたんだけど・・・。』

一応報告。草葉の陰から見ているのか、はたまたもう転生済みなのか解らないからな。アイツはなんやかんやでいい奴だったから、天国には行けただろう。・・・ぎりぎりで。

『だから、安心して転生しろ。いつまでだって、待ってるから。』

都合のいい解釈だってことは分かってる。でも、人間なんてそんなもんだ。都合だとか、意味だとか、どーでもいいものに執着して、一生曇った目で世界を写しているだけ。そーいえばお前の目は燃えていたな、獅朗。いつも誰かのために憤り、誰かのために泣いていた。・・・そんなお前が大好きだったし、誇りだった。

『あ゛ー、ダメだ。やっぱうまく笑えないわ。』



あとがき

しんみりしちゃった。春なのに!

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