その後の彼等

□現状維持
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朝、日は疾うに昇っているが、俺はいつもこれくらいにならないと起きない。
時計を見ると、デジタルの数字が11時を示している。

『ねみぃ。』

服をテキトーに着替え、朝日でも浴びて目を覚まそうとしたとき、

「貴女が、七海様ですね?」

黒服の気持ち悪い気配を放つ男がベランダに舞い降りた。

『・・・いい加減しつこいね。』

俺がソイツに投げかけた言葉はそれだけ。

その言葉が終わる頃には、男は俺が喚んだ風に切り刻まれて肉塊になっていたから、もしかしたら聞こえてすらなかったかも。

『・・・汚いなァ。』

一寸もったいない気もするが、俺は地獄の炎を喚び、ソレを跡形もなく燃やし尽くすよう命令した。

その黒い炎は美しい。

俺の愛してやまぬ輪廻の炎に包まれるソイツはなんとも汚らわしいが。

やだよ、やだやだ。何だって俺なんかを拉致ろうとするのかね?

藤堂三郎太。

俺が唯一心底嫌う相手。

おそらくそいつのいる組織の手の者だろう。

『俺の愛する理を汚す奴等なんて・・・』

【嫌い、か?】

『いきなり背後を取るな、馬鹿兄。』

【相変わらず、妙な奴にばかり好かれるな?お前は。】

『・・・お前のようには生きれんのよ、俺は。一生人間として生きていくなんて、俺には耐えられない。』

【別れが怖いか?一人は嫌か?矛盾したお前はいかにも滑稽だな?】

『滑稽で結構。お前こそ、未だに一人身の寂しい男の癖に。』

【おおっと。一気に論点がずれたな。まあいいが。・・・メフィストさんとは仲良くやれよ?お前には勿体無いほどの相手なんだから。】

『・・・耳が早いな。』

【母様も知ってんぞー?お前が知るより前から。】

『・・・・・ますます実家に帰り辛くなったな。』

【そう言わず、たまには帰って来いよー?どこまで言ったのか根掘り葉掘り聞いてやるから。】

『嫌じゃっつっとろーが!』

俺は渾身の右フックを放った。が、

【ははは、ところでお前、俺が遣ったスピネル、大事にしてるかー?】

会話を止めることなく馬鹿兄は片手で俺の手を弾き返しやがった。例えるなら熊の一撃のような重さと速さだ。

『ああ、いやみなくらいのハイスペックさだったな。永久機関とかチート過ぎるだろが。』

【・・・音楽も聴けるんだぞ?】

『それはいいが、ラジオ機能がついてるものの、いつ聞いても落語者しかやってねーんだが。』

【沖田さんの気分を味わって欲しくて。てへぺろ♪】

『てへぺろ止めい。』

いい加減むかつくのでさっきから鎌鼬を召喚しているものの、全員兄貴の光の檻に閉じ込められてしまっているようだ。傍から見るとパントマイムをしているようにしか見えないが。

【お前、その喧嘩っ早いところは直せよ?大人気ないぞ?】

『うるさい。ところで、そこにいる汚いおじさんは誰?』

【俺は知らんぞ。】

『・・・なんでこう、おっさんばっかり遣すかね?綺麗なおねーさんのがいいなー。』

「七海、捕らえる、仕事、」

【おつむの出来は良くない様だな。】

鎌鼬達は解放され、瑠璃の元へ集った。

『”全員で”かかって来いよ。』

「なぜ、わかった?」

「気配、消した、なぜ?」

「捕らえる、仕事」

「白いほう、女、捕らえる」

【吸血鬼の従者の従者、いわゆる亡者のようだな。もしくは腐の眷属に似たようなことをさせたのか。】

トン、

図らずとも馬鹿兄に背中を預けることになってしまったが、まあ、仕方ないか。

【おい、囲まれちまったが、どうするよ】

『・・・こんな奴等、街中に放っとけるか!俺が刻むから、お前は、肉片を焼く係な。』

【・・・まさに汚れ役だなwww】

魎月を抜刀し、そのまま横薙ぎに一閃。あとは鎌鼬に任せるとして、”さっさと殺らないと一緒に焼かれるぞ。”と、一応忠告してやる。まあ、ここまで腐臭のする奴をおやつにしようなんて考えるお間抜けさんはいないだろう。



無心で切りかかること数分間。敵は一掃したものの、ベランダは血の海だ。こんなところを見つかったらメフィストに殺される・・・・

「これは何の騒ぎですか?瑠璃☆」

・・・短い人生だったな。俺。

【・・・じゃ、そゆことで・・・】

「おや、お義兄さんまでいらしていたとは!まあまあ、ごゆっくりしていってくださいな☆」

【・・・(俺が逃げられない、だと?!)】

『・・・(ざまぁ。死なばもろともだよ、馬鹿兄。)』

【・・・(嫌だー!まだ死にたくないー!)】

「喧嘩してないで、手を動かしてくださいね?二人とも☆」

【『(怖ェー!!)』】

誰だ、コイツに掃除とか教えた奴!

ああ、俺か・・・




あとがき

結局gdgdになった。そんな現状維持。

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