その後の彼等
□チョコはブラックに限る。
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『たらいま〜♪』
「瑠璃!貴女、今までどこに・・・っというか、酒臭いですよ!さてはまたシュラと飲み屋をハシゴしてきましたね?!」
『酔ってましぇ〜ん!』
「会話が成り立ってない時点で確実に酔ってますよ、貴女は。」
やれやれ、という風情で瑠璃を背負うメフィスト。昔からそうだが、彼女はひどく酒癖が悪い。あるときは笑い上戸になり笑顔のまま時空の穴を空けまくったりどことも知れぬ場所に接続したりする。泣き上戸になったときなど、散々作った時空の穴に自ら飛び込むのだ・・・ぐずついて泣きながら。
瑠璃を探し出し、空間を元に戻した頃には朝日が差し、鶏の声を聞いたところで力尽きるのは毎度のことであった。
『えへ、チョコいっぱい貰っちゃったー。』
話の脈略の無さにはもうツッこまないとして、そういえばもうそんな季節だったか。
「ほぉ?誰にです?」
男だったらソイツは幽霊列車に食わせておかねばだな。父上への手土産にはちょうどいい。
『それがねぇ、なぜか女の子ばっかりがくれるんだよねー。変なのー。』
「・・・それは・・・」
それは男と間違われたのでは?と言いかけたが、言わないでおいた。これを言っては必ず泣きが入る。かといって話を中断するわけにも行かない。このまま彼女が寝付くまで話しに付き合うしかないか・・・
『まあいっかー。それでね、シュラちゃんと一緒に飲む前にもいっぱい貰ったんだけどね、シュラちゃんと一緒に歩いてるときも女の子が寄ってきたんだよー。俺はそういう気は無いのにねー。』
「そうですか・・・」
勇気あるな、その娘たち。傍から見ていたら絶対瑠璃とシュラのことを美男美女カップルだとか勘違いしていただろうに。瑠璃に自覚はあまり無いが、銀髪に赤い目で目立たないということはそもそもありえない。コートを着込んでいた所為で体型が大幅隠れているのもあいまって瑠璃は”カッコイイお兄さん”にでも見えたのだろう。
「私の分は無いのですか?」
とはいえ、これで私の分は忘れてたとかってオチだったらここの管理人をシメて来なければなりませんね☆唯でさえ遅咲きのネタなのに。
『ッフフ!そう言うと思って、ちゃんと用意しといたよ。』
そう言ってかばんから取り出されたのは・・
「・・・板チョコ、ですか?」
『うん。なんにするか迷ってね。今年はシンプルにいこうかと思って。』
「それにしてもシンプルすぎるでしょう?!自分はこれだけ手の込んだものを貰っておいて!しかもこれ一回開けた跡があるんですが、まさか食べ欠けとかじゃありませんよね?!」
『・・・まあ、開けてみなよ。』
銀紙を捲ると、角ばったチョコが顔を出した。取り敢えず齧りかけではないな。チョコの端を引っ張ると、そこには・・・
見事にデコレーションされた板チョコが姿を見せた。
『シュラちゃん家のキッチンを借りて作ったんだ。家でやると何作ってるかとか、すぐに分かっちゃうからね。サプライズ的な。』
「・・・・・あなたにしてはかわいらしい仕上がりですね☆」
右端に狼の姿の瑠璃がデフォルメにされて描かれており、へらーっと笑っている。真ん中には”メフィ君へ。 瑠璃より愛を込めないで。”と書いてある。いや、そこは愛を込めるとこだろう?!ここにもまたフラグクラッシャーがいようとは思わなかったな。
余談だが、色つきの砂糖でデコッているらしく、カラフルだ。
『・・・(もぐもぐ)。』
「おや、自分用も作ったんですか?」
瑠璃がいつの間にか食べ始めていたほうにはどうやら私が犬に変身したときの姿が描かれていたようだ。・・・今はもう顔の部分は瑠璃に齧り取られているが。
こちらは白砂糖だけで描かれているようだ。
『やっぱりチョコはブラックが一番だよ。・・・まあ、ミルク派のメフィストには分からないか。』
「・・・瑠璃は甘いのは嫌いですか?」
『チョコはね、ってなにすんだ、っちょっぐむう////』
瑠璃の口内に舌を入れると、ほろ苦い甘さが私の中に広がった。
しばらく歯列をなぞったり、逃げる瑠璃の舌をからめとって遊んでいたのだが、相変わらず息継ぎの下手な彼女が酸欠寸前といった体でいるので一旦離してあげました。
「珍しくサプライズなんて用意した瑠璃に、すこしだけお返しを、と思いまして☆」
『・・・(恥ずかしすぎて)死ぬかと思った。』
「では毎日練習しましょうか☆」
『ヤだよ?!』
あとがき
危うくメフィストさんにシメられるところだった管理人です。今回はバレンタインネタということで、本来なら拍手のほうに入れてもいい話なのですが、テキトー過ぎるのでこっちのほうにしました。普通は逆な気もしますが。