黒十字
□酒は飲んでも呑まれるな。
1ページ/1ページ
夜が来た。
さて、問題は僕が何処で寝るか、である。
アルサーメンの方々には鉢合わせたくないし(せめて明日までは会いたくない。)、かといってトイレやお風呂はどうするか、と考えると、さっさと嘘をつきすぎぬくらいに誤魔化して居直るほうがいいような気もする。
「そんなの、俺の部屋に全部あるぞ?」
・・・僕のさっきまでの悩みを返せよ!ジュダルちゃん!
『マジかよ・・・』
マジだった。浴室、トイレ完備とか贅沢すぎだろー!確かによくよく考えると、ジュダルちゃんと紅覇君たちが一緒にお風呂に入るなんて、ありえないか。どんな仲良く家族だよ。
『・・・僕はあとでいいから、ジュダルちゃんが先に入ってきなよ。』
「いや、そんなんなら一緒に入ればいいじゃねーか。俺は気にしない。」
『そこは気にしろよ!僕はこう見えてももう18なんだよ?!』
「・・・なら、俺の服貸してやんない。」
『卑怯だー!!笑顔と裏腹に心ん中黒いな、ジュダルちゃん!』
で、結局、
『・・・それ以上近づいたら放電するからな。』
「・・・・・ちっ!」
『わー、広いー!あったかいー!泳げるー!』
「・・・・・(ぐいっ)」
はらり、
『ぎにゃあああ?!タオル取れちゃったじゃねーか!何すんだ、馬鹿あああああ!!』
「風呂でタオル巻くのはマナー違反だ。」
『・・・かえして。』
「あー?」
『タオルを返してくださいましいいいいい!ジュダル様ああああ!!』
「んー、よし!返してやる!そのかわり、俺の髪を洗え!」
や、それ僕にとってはご褒美だよ!
『解った。』
『痒いところはありませんかー?』
わしわしわしわしと髪を洗ってやる。
絹のように繊細でつややかなジュダルの髪は、普段の三つ編みを解いている所為か、色っぽく見える。
「ん、気持ち良いぞ!後でリオのも洗ってやる!」
『や、僕はいいって。』
「遠慮するなよー。それとも、リオは俺のこと嫌いなのか?」
『・・・違うけど。』
何かここに来てから僕、この子のペースに流されすぎじゃないか?
「痒いトコないかー?」
『・・・くすぐったいんだけど。それに、誰が体まで洗っていいと言った?!離せ、こんにゃろー!』
「ダーメ!・・・それに、あんまり大声出すとここに居るってバレちまうぞ?」
ふにゅ、
『〜っ///!!やっ、何処触ってんだ、こんのエロ餓鬼!』
「何処って、胸とか?お前って案外胸あるんだな、リオー。」
ふにふにふに、
『・・・(後で殺す後で殺す後で殺す・・・!)』
「リオー?ごめんごめん。怒っちゃったー?」
『・・・ああ怒ったとも。雷帝招来、急求如律令!』
ピシャーン!!
「・・・風呂入った意味無くないか?」
『・・・そだね。』
二人仲良く焦げました。
『うわっ!服、ぶっかぶかだ!』
「布紐貸してやるからテキトーに巻いとけよ。」
『ありがとー。』
わーっ!ジュダルの服だー!本物だー!肌触りいいし、なんかお香(?)が焚いてあって良い匂いがするー!伽羅の匂いだな、これは!
「・・・リオ。」
『ん?なーに?ジュダルちゃん?』
「お前って意外と変態だったんだな。」
『・・・は?!な、なんで知ってんのー?!!』
「いや、お前のルフがそう言ってるし。マギである俺に嘘が通用するとでも?」
『うっ!嘘は言ってないよ!』
「・・・まあいいか。罰として一杯付き合え!」
『僕はまだ18なんだってば・・・』
「煌では16からは飲酒が許可されてる。飲め。』
『むぐぅっ?!』
無理やりお酒を飲まされた。
苦いし、頭くらくらするし、こんなもんのどこがいいんだ?
『・・・』
「おーい、リオ?大丈夫か?」
『・・・・・(ぎゅうっ)』
「っ!おいっ!リオ///!」
『・・・ジュダル、大好きぃ。』
「・・・どーすっかな、この状況。」
どうやらリオは酔うとデレるらしい。
自分が招いた結果とはいえ、このまま手を出したとなるとあとが怖い。
かといって、何もしないというのは、そもそもジュダルには我慢のならないことだった。
ジュダルは彼女に行く当てが無いことも、異世界からきたことも、全部知っていた。(というか、ルフから聞いた。)
はじめは興味本位だったものの、これほど強く、タフな女になどそうそう会えるものではない。戦いの相手としても、女としてもリオはジュダルにとって魅力的だった。
「寝てるし。」
そんな悶々としたジュダルの心情など露ほども知らず、リオは昏々と眠り続けるのだった。
あとがき
我が家のジュダルちゃんは無邪気な笑顔と真っ黒い心を兼ね備えたエロ餓鬼です。っていうとジュダルファンの方々に怒られそうですが、マギって、主人公のアラジンを筆頭にシンドバットさん、アリババくんが夜の街だとか、現地妻だとか、色々やらかしてますし、きっとジュダルちゃんも・・・・。ただし、今回はちょっぴり破廉恥はあるものの、子供同士のお悪戯、という話を目指しています。なので、安心して見てください。・・・なお、お悪戯じゃなくなる場合には、鍵をつけますので、悪しからず。