しあわせってなんだっけ?
□幸運
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先触れの蟲はどうやらこの世界のベルゼブブの配下のようで、蟲の後には妖精のような姿の悪魔が数を増してやってきた。下級〜中級らしく、結界には引っかからないようだ。
『これは・・・狩ったほうがいいかな?』
俺とて、こいつらの目を通してサタンに見咎められたくは無い。久々に魎月を構え、薄く白い火を灯す。そして一瞬で炎を結界の内側を覆うように広げ二重結界を作り上げた。
『まあ、こちらのベルゼブブに遠慮などいらないか。』
まず一閃。口が耳まで裂けた妖精や、やたら目の多い蟲の群れが白い炎に飲まれてすぐに燃え尽きる。器を失った悪魔たちの魂は虚無界ではなく地獄でもなくここで灰も残さず消えていくのだ。申し訳ないが、これが自然淘汰というやつだ。
数を減らした後、炎の結界を一点に凝縮し、そちらは地獄に送る。これを見たら閻魔はなんというだろうか。泉花を遣したからさして怒りはしないだろうが、呆れはするかもしれない。”銀狐は今日も健在だな”と。
銀狐といわれてもこの髪色は父方の遺伝なのでなんともいえず微妙な気分だ。閻魔は分かってて言っているんだろうか。俺が言うのもなんだが、性格の悪いやつだ。
一応メフィ君に事の次第を報告しておいた。が、話の前後一貫して機嫌がよかったので、何か良いこと(俺にとっては良からぬこと)が起きたのだろう。その証拠に彼はハート型のベルト留めが特徴的なフォーマルなコートを着ていた。恐らくヴァチカンに呼び出されたのだろう。
「蟲たち事態が先触れだったと言うこともありえますので、今回は全部切り捨てちゃってくださいね☆」
振り向き様にそう言われた。こいつは俺をセコムかなんかだと思ってんだろうか。
次の日は禽(とり)、その次は猫科の獣だった。さすがに先が見えているのでわざと見逃して(俺の記憶は消したが)冥瞑を紛れ込ませると、撤退し始めた。殲滅令を出しておいたため帰ってきた冥瞑は敵の帰り血で汚れていた。彼女曰く、
「自然淘汰を模した禍つ式ですね。最後には人に化けて成り代わり、内側から集落を食らうと言われています。」
『やっぱりか。術者のほうは俺が殺っとく。』
冥瞑を洗ってやってから術者を探すと、驚いたことにそいつは100年も前にこの世を去っていた。誰かが禍つ式を目覚めさせたというわけでもなく、負の気に中てられて活発化したようだ。ベルゼブブの配下に似ていたのは、恐らく書物でも参考にしたのだろう。
幸い、サタンの使いではなかったが、厄介なことに変わりないので自滅してもらうことにした。術者の手を離れた禍つ式は結界に触れたとたん共食いを始め、最後の一匹は炎に包まれて地獄に強制的に送られる。
・・・正直、もう来ないでほしいと思った。
あとがき
本誌ネタ、出してる人もいるようですが私的にはフェアじゃないと思うので話をあわせる程度にしています。