しあわせってなんだっけ?

□先触れ
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なんだか最近、気の流れがおかしい。悪魔が好む負の気が多いように感じる。と、言うのも俺がその負の気を糧としているから気づいたのだ。最近は、さすがに人一人消えても騒ぎになる。メフィストは人間観察が好きだし、彼の庇護下にいる俺も人間の秩序を守らねばならない。それが無くとも最近の人間は昔ほど美味しくは無いのだが。そんな理由もあって、俺はこの正十字学園町の負の気を食しているのだ。

『それと、異界の臭い・・・。』

本来異界とは貴婦人のようなもので、あちらに招かれなければ行くことはできない。この物質界とつながるのは虚無界しかありえない。お互いがお互いを映し合う合わせ鏡。

『まあ、彼が何を企もうと知ったことじゃないがな。』

俺は”計画”を手伝う気は毛頭ない。彼が俺をここにおく理由は俺の能力は野放しにしておくには危険だから、たとえば悪魔喰いの奴らに手を出されたり、”計画”を穴だらけにする危険性があるから。それがなくとも俺は一人では生きていけないのだけれど・・・

思えば、俺が大怪我をして帰ってきてメフィストと喧嘩をしたことがあった。彼は(たぶん)心配してくれてたんだろうに、手負いだった俺が噛み付いて拒絶したからだ。100歳や200歳のヒヨっ子じゃあるまいし、我ながら大人気なかったな。獣の性は普段は出てこないが確かに俺の中にある。逆に人間の人格、なるものはいないのだろう。時折思うんだ、俺は人間にしては自分に疎すぎると。

人と共に生きるのは辛過ぎる。置いていかれたくない。でも、代わりとして悪魔である彼と共にいるというのはなんだか申し訳ない。俺は結局どうしようもなく中途半端な存在だ。偽者で混ぜ物。ただ、不死という能力だけが本物。

『・・・限りなく本物に近い偽物に、なるしかないか。』

メフィストの本棚から借りた本で読んだ一説。月のような偽物のゴーストバスターさんの台詞を思い出す。・・・まあ、俺は月のように美しくは無いのだけれど。

先触れの羽虫が飛んでいく。玉虫のような輝きの羽が一瞬俺を映す。地獄の空軍の兵卒か。見ているとなぜか気持ちも凪いできたので、彼の蝿の王の下からちょろまかしてきた翅でしばらく散歩した。




あとがき

また一人語りさせてしまった。

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