千一夜物語

□四夜 お客
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鰐氏と出かけた後、帰宅する頃にはワタシはもう暑さでヘトヘトで、一旦お風呂に入ってくると言って、氏と別れた。

『お風呂だけは大きすぎないんだよな・・・』

かといって普通の家ほど小さいと言うわけでもなく、ざっと見て十二畳半くらいだろうか。内装も凝り過ぎず、シンプルな造りになっている。鰐氏は能力の性質上、水を嫌っている。唯、能力云々を差し引いても、氏はさしてお風呂場にお金をかけはしなかっただろう。なにせ彼一人しか使う者がいなかったのだから。

『・・・石鹸派なのかな?』

シャワー台に置かれた石鹸を見てそう思ったが、シャンプーとリンスの隣にもうひとつビンがあるため、どうやらワタシのために両方置いてくれたらしい。

『氏と同じ匂い、か・・・。この姿じゃ、なんとも色気がないが。』

誰かが少年の姿をしている今のワタシを見たら、なぜ氏がワタシをここに住まわせているのか、そう思うに違いない。

お風呂を上がり、着替えて髪もあらかた乾かして鰐氏の部屋に戻ると、お客さんが来ていた。

「フッフッフッおい鰐野郎、誰だこいつは?」

「新しい社員だ。」

『フェーデです。』ぺこり
ワタシは小さく会釈した。

「ほう?それにしてはずいぶんとかわいがっているようだなァ?」

「余計な詮索はするな、フラミンゴ野郎。」

『・・・お二人とも仲悪いですね。』

真ッピンクの服を着たお客の名はドンキホーテ・ドフラミンゴというらしい。鰐氏と同じく七武海だそうだ。話に収拾がつかないので、ワタシが悪魔であることを話すと、

「フッフッフ!おもしれェ!!」

といたく上機嫌な桃鶴氏とは対照的に

「・・・」

無言でワタシと桃鶴氏を睨む鰐氏はかなり怖い。後一回でも何かやらかしたら、キレるんじゃないだろうか。

取り敢えずワタシが見た実在する伝説やら御伽噺を話してその場を凌いだ。人の姿をした美しいドラゴンの娘話や、国をのっとられた歌姫が、歌と踊りで祭りに偽装して軍を率いて進軍し、まんまと国を取り返した話など。

「いやァ、面白かった。また来るぜ、フェーデ。」

「二度と来るな。」

『・・・さよなら。』

お客は嵐のように去っていった。



あとがき

フラミンゴさんを出してみた。

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