その後の彼等
□傲慢と末っ子
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始まりは一本の電話だった。
『・・・は?』
[ですからっ、ルシファー君がそちらに向かった、と言ったんですよ!私がうっかりあなたの弟のことを話したら、ぜひ会いたいと言い出して・・・]
説明しよう。
俺の弟には、実はある体質があるのだ。
それは、”異様に悪魔に好かれる”というものであり、そばにいる悪魔に”この人のためなら死んでも良い”と言わしめるほど、酔わせるのだ。
メロメロ状態にする、と言えばわかりやすいか。
そうなった悪魔は、彼に傷ひとつ付けることは出来ず、それどころか身を挺してでも守ろうとする。
・・・そうなれば魔界の戦力的均衡はガラガラと音を立てて崩れるだろう。
まあ、虚無界とて、同じなのだが。
『どうしよう、メフィスト君。』
俺は、魔界フォンを仕舞いつつ言った。(虚無界フォンは無い。語呂が悪いし、何より電話相手(主にサタン)が怖いから。)
「とにかく弟さんに連絡を取ってみては?」
『そ、そうだね。』
[prrrr、prrrr、ガチャッ、]
『もしもし?』
[オウ、瑠璃か。オレの声が聞きたくなったのか?]
『違わああああ!!っつーか、なんで手前が出てんだ!これ、公輝の家電だろーが!!』
[落ち着けって、まずはオレの美声を聞け。]
『知るか!手前じゃなくて公輝に電話代われ!』
[なんっ[もしもしー?姉ちゃん?なに、どしたのー?]]
『公輝いいいいいい!!無事かあああああ?!』
[え?うん。なんで?]
『なんか、べーやんからルシファーがそっちに言ったって聞いたからさー。何もされてないよな?』
[うん。]
『よし、じゃあ、そこにいる俺様馬鹿ふんじばってでも連れて来て。』
[わかったー。]
なにやら電話の後ろで”ナニソレ、新手の緊縛プレイ?!”とか言ってる馬鹿がいたようだが、問題は無かろう。
そう、公輝は何も問題ないのだ。(あるとしても少しSに目覚めるだけである。)
だが、ルシファーは・・・
っぽーんっ!
『来たか。』
「いらっしゃい、公輝君☆」
「こんにちはー!」
「・・・ハアハア」
ああ、見たくなかったわー、数々の書でサタンと同一視される地獄の第一位のM顔なんて・・・。
弟の体質の所為もあるが、この手のフェロモンに耐性の無い奴、あるいは恋愛経験の無い奴が時たまこうなるのだ。
メフィストが矢鱈と公輝にやさしいのも実は・・・なんて勘繰りはしたくない。死んでも、だ。
この能力は悪魔キラーと呼ばれ、一時期”是非、手騎士になってください!”と、騎士団に言われていたのだが、俺が”どう考えてもリスクのが高い”と突っぱねたのと、本人が”僕は悪魔のお医者さんになりたいから”と、良く解らないことを言ったために取りやめになった。
「大丈夫ですかな、公輝君ー?!」
『おっ、べーやん。大丈夫だよ。』
ここまで心配してるのはもしや、と、べーやんまで疑うのは失礼だろうか?
ともあれ、この末っ子が百鬼夜行の王となることは間違いあるまい。
本人は断固として悪魔を診る医者になる!とか言いそうだが。
・・・悪魔を診る医者ってなんだ?医工騎士ではないのか?
あとがき
取敢えずSとMしかいない話を書いてみたかったのです。
・・・瑠璃さんはともかく、メフィストが私はノーマルですって宣言したら笑うほか無いのですが。