しあわせってなんだっけ?
□錬金術
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「瑠璃。いつまでその姿でいるつもりなんです?・・・魔力なら十分にヴァチカンの方々から頂いたでしょう?」
『・・・バレてたか。』
ボウン!と音を立てて色のない煙が舞い、それが切れるとそこには瑠璃が元のサイズに戻って立っていた。
「当たり前です。貴方は負の気を食らう魔物。疑念や苛立ちが貴方に向かうほど、貴方の魔力は増すのだから。」
『ふふ、流石に長く一緒に過せば理解っちゃうかー。・・・まあね。久々に主食にありつけたって感じ。もとはご飯派なのに芋ばっか食ってたような気分だよー。』
「酷い言い草ですね☆」
『ああ、君の魔力は俺にとってもご馳走だよ?ただ、平穏の中で唯々与えられたご馳走を食らうのは性に合わないのさ。』
「刺激が欲しい、と?そうおっしゃるのですか?瑠璃。」
『そうだねェ・・・最近、どうにも不完全燃焼気味でさ。俺の中で何か燻ってんだろうケド、ソレが何かまでは分からない。君の”計画”とやらが終わっった頃にはこの感情の答えも出てくるのかも。』
不穏な会話を終わらせて後、不意にその影は訪れた。
≪なら、私のほうがこの方には相応しいわ!≫
『・・・誰?』
「サキュバス、ですかね?」
≪そうですわ、メフィスト様!ああ、この日をどんなに待ち望んだことでしょう!さあ、こんな半妖なんか放っといて、私と一緒に虚無界へ帰りましょう?≫
『待ちなよ。ソイツと俺とは今、契約中なんだ。勝手に連れてかれては困る。』
≪あら?そうなんですの?でも貴女、この方の本当の名も知らないのでしょう?・・・信用されてないのね。≫
『ハッ!行動だけで示す信頼も、言葉だけで示す信頼も、等しく無意味だ。・・・俺ァ手前ェと話をしてやる義理は無ェ、帰れ。』
≪な、なによ!偉そうに!私はアンタなんかに従わないわ!≫
『そうか、なら・・・二度と契約できぬ獣となるが良い。サキュバス:エンヴィー。』
轟、と空気が、否、空間が唸りをあげて渦を巻き、サキュバスを内へと閉じ込めた。そして彼女の足元には五芒星と八芳星を重ねた魔方陣が怪しく光りだしていた。
『音は空を翔り、電子たちを震す。声が境を厭わず言の葉を万人に伝えるように。汝、わが言の葉を解さぬ者よ、獣となって生くるが良い。』
竜巻が止むと、そこには小さなトカゲが蹲って啼いていた。
数分後。
「・・・さっき、何をしたんですか?」
『何って、畜生道に堕しただけだよ?』
「分かりやすく説明しろ。」
メフィストはぺちっと俺の頬を両手で挟んでそう言った。・・・目が笑ってない。
『ざっくり言えば、魔術と、錬金術と、陰陽術の合わせ技だよ。まず、名づけることで一瞬だけ契約し、対象自身のの存在の所有権を盗んだ後、次に”生き治す”為の器を練成し、最後に器に定着させれば、出来上がり〜。』
「三分クッキングか?!!・・・錬金術にしたって生命の練成は禁忌でしょう?それに存在の所有権って、貴女まさか、父上から悪魔一匹盗み出したってことですか?!」
『そういうことになるね。』
「〜っ!いずれにせよ、貴女の本質は錬金術にある。そうでしょう?」
『そうだよ。電子を操り、言の葉を統べ、時空を渡る錬金術師。昔、”不恭、不死、非道の魔術師”なんて呼ばれてたけどね。言っただろ?”昔は喧嘩好きだった”って。』
「唯の喧嘩好きの域を超えていると思うのですが・・・」
『神と賭けをした君に言われたくないよ。』
「・・・、では、理を犯す術をなぜ敢えて使うのです?」
『魔女とは、あらゆる神を冒涜するものを指す、らしいからね。それに、実現している時点でこれも理に適ったものである、と俺は考えてるよ。』
あとがき
色々と混ぜこぜになりましたが、”いわく付き”な我が家の夢主の本性をチラ見せできた気がします。今回の術は”人の話を聞かない悪い子は獣になっちゃえ!”という大変横暴な代物です。普段臆病なのに、妙なところで大胆なのが瑠璃さんの特徴です。・・・ある意味嫉妬深いともいえますが。