背徳、なんて言葉は、おれにはちょっと難しいし…何より、めんどくさい。意味もあんまりよく分かんないし、知ろうと思ったことすら無い。それ程おれには無縁な言葉で、関わりのない世界だった。――そう、だった、だ。それは今や過去形で語れる事柄であって、「そんなこともあったね〜」と笑い話として話せることだ。難しいと感じてた背徳という言葉も、すごく身近なモノへと変貌してた。…それは、なんでか。






神様なんか信じちゃいなかった。無神論者を気取っているんじゃなくて、ただ崇拝するほどの高尚な存在がおれの前に現れなかっただけ。現れてくれないまま、おれはずっと生きてきた。なんとなく始めたバスケをずっと続けてきて、毎日を気楽に、怠惰に、生きてきた。神様なんかいなくたって、おれが生きていく上で困る事なんて皆無だった。居ようが居まいが、おれの生活サイクルには一ミクロンの影響も生まなかった。








だから、たとえある日突然おれの目の前に神様とやらが舞い降りてきたところで、それの前に跪いて頭を垂れる…なんて無様な姿を晒すことなんて無いと、信じてた。








なのに、そうしておれがおれ自身に抱いていた信用を根刮ぎ奪っていったのが、赤ちんだった。誰よりも暴君で、勝つのは呼吸と道理と考えてて、絶対の支配力を有していた赤ちんに、おれは呆気なく屈伏した。服従した。そして何より、敬愛した。







赤ちんの言う通りにしてれば、間違ったことなんか一つも起こらなかった。赤ちんの言葉はいつでも正したかった。赤ちんはなんでも知ってた。だからおれは赤ちんの言葉に従った。赤ちんの指示通りに動いた。赤ちんが望むままに振る舞った。駒のように。犬のように。




そうすれば赤ちんは、たまーにだけどぶっきらぼうに褒めてくれる。少ない御褒美がおれは嬉しくて、それ欲しさにますます赤ちんにのめり込んだ。手放したくなくなるぐらい、赤ちんの存在はおれの中でどんどん大きくなっていった。








でも――時々、無性に赤ちんを壊したくなる衝動に駆られることがあった。その高慢さをなし崩しにして、強気を根刮ぎ剥ぎ取って、許しを乞わせてみたくなることがあった。端的に言えば、泣かせたくなる時があった。




まぁあの赤ちんが人前で泣くなんて、天地がひっくり返っても無さそうだけど。っていうか赤ちんって泣くのかな? そもそも泣いたことがあるのかすら怪しい。赤ちんなら生まれた瞬間から「殺す」とか言い出しそうだよね。妄想とかじゃなくて、わりと本気で思う。







血はあれど涙は無い。それが赤ちんだと、おれは思う。







その赤ちんの涙を見たいってわりと本気で思うおれは相当バカだって自覚はしてる。でも見たいと思っちゃったものは仕方ない。突飛な思考って怖いよね。




一回考え始めたら次はそれを行動に移したくなる。ちょっと我慢してたけど、そろそろ限界なんだよね〜。さて、どんな行動が赤ちんの涙を引き出してくれるんだろう。赤ちんを悲嘆の渦に巻き込み、あの鋭いオッドアイから涙を滲ませることが出来るんだろう。






おれは考えた。ちっちゃい脳味噌を赤ちんみたい…にはいかないだろうけどフル回転させて、いっぱいいっぱい考えた。くだんないことに頭使ってるのかもしれないけど、正直言うとバスケしてるよりも有意義に感じちゃってた。どんだけおれは赤ちんの涙が見たいんだろって、一人笑った回数はもはや分からない。








そして幸か不幸か、おれはその方法を思い付いちゃったわけで。








思い付いてから実行に移すのが、おれは早かった。普段の自分が緩慢にしか行動しないと自覚しているのに、おれはこの計画を、一刻も早く遂行したくて仕方なかったんだ。






















「やめ、ろっ…敦っ」
「んー、ごめん、無理」
「ひぅっ!」






最後まで入ったのを確かめるように結合部を撫でたら、それにすら感じちゃったらしい赤ちんが普段じゃ考えられないような高い引きつった声を上げた。慌てたようにすぐ口元を覆ったけど、出て行った音は戻ってこないから無意味だ。



羞恥からかな、それとも散々の愛撫で高められた熱のせいかな、紅潮した赤ちんのほっぺたは凄く美味しそうだ。けど残念ながら、そこに涙の筋は一つも無い。まだ、赤ちんは泣いてくれていない。






神様のような赤ちんを組み敷く、この行為こそが、背徳というんだろうか。分かんないけど、当てはまるような気がしないでも無い。





「赤ちん分かる? 今赤ちんのナカにおれのが入ってんだよ。ほら、ここにさ」
「っう、るさ、い…」





下腹部に視認出来る膨らみをこれ見よがしに指差してあげれば、左右色の違う目が強く強くおれを睨み付けてくる。そこに浮かんでいるのは明らかな憎悪。そして、殺気だ。





当たり前だよね。ずっとずっと大人しく言うこと聞いてた駒に、反旗を翻されちゃったんだからさ。悔しいに決まってるよね。赤ちんは、自分の思い通りにならないことが一番嫌いだもんね。





今まで感じたことの無い優越感に、口の端がつり上がるのが自分でも分かる。赤ちんはいつもこんな感覚を味わってたのかな? …いや、そもそも、赤ちんは優越感すら感じていなかったかもしれない。おれ達を従えるのは、赤ちんにとっては『当然のこと』なんだから。優越感を感じる必要なんか、そもそも無かったんじゃないかな。











練習が終わって、聞いてほしい話があるって言って赤ちんを部室に留まらせた。さっさと言えって話を急かす赤ちんを頑張って宥め賺して、二人きりになるまで粘った。実はそれが一番大変だったのは内緒。




最後の部員が出て行った瞬間、おれは赤ちんを床に押し倒した。毎日同じメニューをこなしていて体力に遜色はないとは言っても、おれと赤ちんの体格差じゃあ、圧倒的に赤ちんが不利だ。不意打ちなら、力任せに床に押し倒すのはすごく簡単だった。






呆然としてる赤ちんを放置して、そのままおれの蹂躙は始まった。赤ちんの服を剥いで、愛撫を施して、熱を高まらせて、受け入れさせる準備をして。好き勝手に、赤ちんの身体を暴いていった。初めてのことでちょっと手間取ったけど、まぁほぼ予定通りに事は進んだ。







抵抗が無かったわけじゃない。寧ろ全力の抵抗だった。体での抵抗と、言葉での抵抗。両刀での抵抗にちょっと負けそうになったけど、どっちの抵抗も、赤ちんのアレを握り込んでやればすぐに鎮静した。いくら存在が神様と酷似していても、赤ちんも結局は人間。おれと同じ人間だった。だから、快楽に抗えるはずが無かった。









いっぱい考えたんだよ、おれ。どうやったら赤ちんが泣いてくれるのかって。スッゴくスッゴく、考えたんだよ。









でも、おれが暴力を奮ったところで赤ちんが泣いてくれるとは到底思えなくて。かと言って罵倒も決して効果的じゃなさそう。「泣いて」って頼むのなんか論外だし。打つ手無しって感じ。






その結果、思い付いちゃったのがこれ。つまり――ゴーカン、だった。これなら赤ちんは絶対泣いてくれるって、おれは信じて疑わなかった。男の赤ちんが、同じ男のおれに女扱いされるのなんて、屈辱以外の何者でも無いだろうから。暴力なんかよりも、よっぽど合理的な手段じゃない?








おれと赤ちんは別に付き合ってるわけじゃない。おれは確かに赤ちんのこと好きだけど、ただの[神]と[駒]の関係であって、それ以上でもそれ以下でもなくって。だからこの行為は、赤ちんの尊厳をズタズタにする、唯一無二の方法なんだ。[駒]に好き勝手に犯される[神]。ああ、なんて甘美な響きだろうか。





「敦…やめろ…」
「やーだよ。ほら、早く泣いてよ、赤ちん」
「んあぁっ! ひ…や、やだっ、あつし…いやだっ…!」







無遠慮に腰を動かしてあげれば、赤ちんの身体は面白いぐらい跳ねて高い声を上げては拒絶の言葉を繰り返す。それは充分におれの支配欲や加虐心を刺激してくれるものだったけど、おれは不満だった。







だって、赤ちんは鳴いてはくれるけど、一向に泣いてはくれないんだもん。身体や瞳は快楽に素直に溺れ始めてくれているのに、一滴の涙すら浮かべてくれない。とろけた瞳には充分ドキドキさせられるけど、おれの目的達成には程遠い。





ムッとしたおれは、赤ちんのアレをギュッと握り込んだ。急所を他人に触れられる驚きと握られた痛みで、赤ちんの瞳がこれでもってぐらい見開かれる。





「ああぁ! あっ、敦っ、痛いっ…はな、せ…!」
「ヤダ。赤ちん、痛いの好きでしょ?」






尿道を爪でグリッと抉りながら、腰を叩き付ける。なんとかおれの手をほどこうとしてた赤ちんは、その衝撃でまた一際高い声を上げた。手の平の中で赤ちんのはビクビク震えて、先走りの蜜がダラダラと垂れ流しになってる。それを擦り付けるように扱くと、卑猥な水音が聴覚を犯す。その感触に感じているのか、赤ちんの腰がほんの少し揺らめいた。





それにちょっと気分が良くなったおれは、浮き出ている血管にも爪を立ててやった。快楽よりも痛みが勝ったのか、赤ちんが上げた声は苦痛にまみれていた。けど、痛みに萎えることのない、寧ろ硬さを増した赤ちんのは垂れ流す蜜の量が増えた。手を離し、手の平に付着したそれを、赤ちんに見せ付けるようにベロリと舐め上げた。






「ね? 赤ちん、痛いことされてんのにこんなんになってんだよ。痛いの嫌いとか、うそじゃん」
「っ…!」






嫌そうに歪められた赤ちんの顔を、おれは見下げる。相変わらず全然涙の滲まないオッドアイ。逃れようのない悦楽に、赤ちんの身体はとっくに浸食されているはず。なのに未だ生理的な涙も浮かべないってどういうこと? ムカつく……ムカつくムカつくムカつく。









どうしたら赤ちんを泣かせられるんだろう。せっかく赤ちんに嫌われちゃうの覚悟でゴーカンまでしたのに、泣いてくれなきゃ意味無いじゃん。せっかく無い頭捻って考えたこの手段が効を成してくれなきゃ、おれの目的は達成されないじゃんか。










快楽にとことん堕としてやるべきか。それとも痛みをもっと与えてみるべきか。どうしようか。どうしたら赤ちんの涙を、引きずり出すことが出来るんだろ。







「どうやったら泣いてくれんの? ねぇ、赤ちん」
「ふあっ…!? ひ…や、あぁうっ…!!」






細い腰を強く掴んで、ムチャクチャに腰をぶつけた。沸き上がる苛立ちを全て叩き込むように、情けも容赦も全く無しに、ただ自分の欲望の赴くままに赤ちんを犯した。おれが腰を叩きつける度、肌と肌がぶつかる音が響いた。慣らすのに使った軟膏が互いの体温でとろけて、おれのが抽挿を繰り返す度にぐちゃぐちゃと水音が鳴って鼓膜を震わせた。




激しい律動に赤ちんの華奢な身体はガクガクと人形のように揺れて、閉じることを忘れてしまったかのように開きっぱなしの口からはひっきりなしに嬌声が上がる。口の端から零れる唾液を舐めとると、それはなんとなく甘味だった。






赤ちんの奥深くを犯しながら、赤ちんの良いところを探る。男にも後ろで感じる箇所があるらしいって、ゴーカンの予備知識を蓄えてた時に何かの記事で読んだ。前立腺っていったかな…それをもし探り当てることが出来れば、今度こそ赤ちんは泣いてくれるかもしれない。その箇所が与えるのは、全く未知の快楽だ。それに呑まれた赤ちんがどこまでよがり狂うのか、喘ぎ狂うのか、想像するに難い。でも、それによって生理的な涙でも浮かべてくれれば、おれの目的は達成出来るんだ。本望とは少し違うけど…ま、この際文句なんて言わない。






「く、ううぅ…! …っああ、はぁっ…っ」
「っ…ねぇ、赤ちん、きもちい?」






声を抑えきれず、赤ちんはただ鳴くばかり。普段より大分高い声音に、おれの背筋がゾクゾクと震える。赤ちんのナカは熱くて柔らかくてちょっとキツくて、おれの欲を存分に刺激してくる。目的を達成する前に、おれが先にイっちゃいそう。





湧き上がる射精感を堪えながら、おれは赤ちんのナカをめちゃくちゃに掻き回す。一体どこが赤ちんのイイとこなのか、神経を研ぎ澄ませてそれを探す。がむしゃらに動くから色々な刺激が赤ちんに伝わってるみたいで、赤ちんの嬌声は度々色を変える。艶がかったものだったり、吐息混じりのものだったり、一際高いものだったり。でも、どれもまだ我慢の利くものばかり。おれの求めてるものには程遠い。だって、前立腺を刺激された人は鳴きぱなっしになるって書いてたもん。赤ちん、鳴きぱなっしになってないし。





こうなったら、もう自棄だ。おれは更に腰を奥に進めて、深く深く赤ちんと繋がった。そのまま角度を変え、また違う刺激を赤ちんに与えた。――その時だった。






「ひああぁっ!!? ひっいっ、や、ぁあぁ!!」
「え……?」







おれのの先端が、ある固い一点を掠めた時。赤ちんが、今までと明らかに違う反応を見せた。試しにもう一度そこを突くと、赤ちんは大袈裟なぐらい背をしならせ、赤い髪を振り乱し、今までよりも高い声で鳴いた。





「…ここ?」
「あぁぁっ!!!」







興味本位でまた一回。また赤ちんの身体は異様に跳ねて、ビクビクと全身を痙攣させる。浅い呼吸を繰り返し、ひっきりなしに喘ぎ声が上がった。はふはふと呼吸を繰り返して、平常心を保とうと必死になってる。







きっとここなんだ。ここが、赤ちんの前立腺なんだ。







見開かれた瞳が、じわじわと濡れ始めてる。今までものとは比べ物にならない強い快楽に、虚勢が崩れ始めたんだろう。もう少し。もう少し追い込めば、完全に快楽に堕とせば、赤ちんの涙が見れる。ようやく見えた自分の目的達成に、おれの胸は否応無しに高鳴った。





「や、あ、あつし、はっ、やめろっ…いやだっ…!」
「やーだ、やめなーい」
「ひぐっああぁ!」






ようやく見付けた前立腺を集中的に攻め立てる。赤ちんの腰を掴み直して、抉るように腰を叩き付ける。ゴリゴリと固いそこをこれでもかってくらい擦ると、赤ちんの赤い髪がパサパサと音を立ててシーツに散る。なんとか抗おうとしてるのか手足がバタバタとおれを叩くけど、全然力の入ってないそれで叩かれたって痛くも痒くもない。悲鳴のような嬌声はおれの鼓膜を揺さぶり、甘美な刺激を与えてくる。それはどんなお菓子よりも、甘くて素敵なものだった。






片手でかっちり腰を固定して、もう片方の手で赤ちんのをキュッと握る。固く張り詰めて先走りの蜜をダラダラ零してる赤ちんのを愛撫して、赤ちんを更に追い込んでいく。






「ひぃっ!!? あっぁっ…ひぐ、あぁっ、は、うあぁっ!」







限界が近いのかな、赤ちんのがビクビク震えてる。前と後ろを一緒に刺激されるのって、どれくらい気持ちいいんだろ。あの赤ちんがこんなに乱れちゃうんだから、きっと相当な快楽なんだと思う。弛んでる涙腺から滲み出してきてる涙は赤ちんの瞳を覆ってて、このままいけば、それは簡単に零れ落ちきそうだった。





あぁ、早く落ちてこないかな。赤ちんの涙は、一体どんなのなんだろ。どんな色をしてて、どんな味がするんだろう。楽しみだな〜。どんな形であれ、おれのせいで涙を見せることになるなんて、赤ちんにとってはすごく不本意かもね。赤ちんは強いもんね。おれ達なんかより、全然強いもんね。










でも――結局赤ちんも、人間だった。おれと同じ人間だった。快楽には抗えない。欲求には抗えない。どんなに強くあっても、人間としての欲には従順だった。現に今の赤ちんは、おれの下でまるで女の子みたいに鳴いて鳴いて鳴いて、快楽に狂わされて狂わされて狂わされて――堕落の一途を辿るばかりだ。










今の赤ちんは、玉座から引きずり下ろされそうになってる神様だ。たくさんある駒の中のたった一つの手によって、その座から遠ざけられようとしている。引きずられないように必死に玉座にしがみついているけれど…おれは、しがみついている手を悠々と絡め取り、完全な堕落へと誘うんだ。









おれは左手を伸ばし、赤ちんの右手を捕まえた。五指を絡めて、キュッと力を込めた。そうすればアラ不思議、まるで恋人みたいな繋ぎ方。


赤ちんが、繋がれた手を見て困惑してる。きっと、ゴーカンしてきたくせに何でこんな風に恋人みたいなことするのか、分かんないんだと思う。涙の膜に覆われた瞳で、荒く呼吸を繰り返しながら、おれと手を片目ずつで見てる。器用なことするよね、赤ちんって。






「は…あつ、し…?」
「赤ちん」







静かに名前を呼んで、額に一つキスをする。恋人にするみたいに、優しい優しいキス。






「おれね、こんなことしたけど、赤ちんのことがキライになったんじゃないから。そこだけは覚えててほしいな〜」
「…はぁ……うそくさい、な…」
「どう思ってくれてもいいけどね〜」






前立腺をわざと外すように腰を動かして、中を抉る。赤ちんはまたか細い吐息を漏らしたけど、声を上げなかった。散々前立腺ばっか突かれてたから、他の場所じゃ気持ち良く思えなくなっちゃったのかな? 本当のとこはどうなのか知らないけど。






「おれ、赤ちんのこと好きだよ。好き好き大好き。誰よりも好きだよ。だーいすき。…だからね」





耳元に口を寄せて、おれはそっと囁いた。
















「――おれのために、泣いて」














その瞬間、赤ちんが目を見張った。悟ったんだろう、おれの意図を。目的を。快楽に絆された頭で、ようやくおれの真意に気付けたんだろう。赤ちんにしては珍しく洞察力が欠けてたから、今の今まで気付けなかったんだよね(いきなりゴーカンされたんだから、当たり前っちゃ当たり前)。





でも、もう遅いよ赤ちん。もう赤ちんはおれに勝てない。赤ちんは初めて負けて、おれの前で泣くの。おれが与える快楽に精神を瓦解させて、その涙を零すの。






「敦っ、まてっ…ひぁっ!!」
「待たないよ。待ってなんか、やらないし」
「ああぁ! やっ、あぁ、だめっあああぁ…!!」





繋いだ手はそのままに、おれはラストスパートを掛ける。赤ちんは限界が近いのか、「だめ」とか「やだ」をさっきよりもやたらと口にする。張り詰めた赤ちんのはふるふる震えてて、もうすぐにでも出しちゃいそうな雰囲気だった。






おれも、そろそろ限界だった。腰を動かす度に赤ちんのナカがおれのをギュウギュウに締め付けてくるから、正直堪えるのがツラい。このまま根刮ぎ搾り取られちゃいそうだ。赤ちんに全くその気は無いと思う。っていうかこうなってんの、十中八九おれが原因だし。





「っ…出すよ、赤ちん…っ」






長かったこの行為も、もう終わり。赤ちんの涙を引きずり出して、赤ちんの心におれに犯されたっていう事実を刻みつけて、『紫原敦』という存在を特別なものに変えるの。おれを、一生忘れられないようにしてやるの。




そうしたら、フィフティフィフティ。おれは赤ちんの涙を見れるし、赤ちんはおれをずっと意識するようになる。駒とは違う、もっともっと違う存在として。ほら、平等じゃない?






「っは、あつっ…んあ、あっやめ、ろ……なかはっ…!」
「ん、く…ごめ、ん…無理……っうぅ」
「ぁあっ!? ひ、あ、あぁぁ―――!!!」






ぶるりと背が震え、そのまま赤ちんの最奥に盛大に精液をぶちまけた。赤ちんは悲鳴みたいな声を上げて、背をしならせて自分もイってた。その時に、とうとうキャパオーバーした涙がボロボロと零れて、紅潮した赤ちんの頬を伝い濡らした。






イった余韻で呆然としている赤ちんの頬にそっと舌を這わせ、涙を掬う。赤ちんの涙は、想像していたよりよっぽど普通で、塩辛いだけの人間味に満ちた涙だった。誰よりも綺麗に光る赤ちんの涙だけど、神の座から失墜した赤ちんの涙は、ただの塩辛い雫でしかなかった。



その事実に拍子抜けしちゃうのは、勝手かな? 変な期待を寄せてたおれが悪いのかな? …あぁでも、一つだけ、絶対の確信を持って言えることがある。






「赤ちん、すっごい可愛いし」





どこを見てるのか分からない虚ろな目をしてる赤ちんに笑顔で賛辞を送る。飛沫した精液で腹を汚し、絶えず零れる涙で頬を濡らし、浅く呼吸を繰り返すだけの赤ちんは、どんな女よりも可愛く見えた。涙の筋が残る頬に小さなキスをして、無気力に投げ出されたその身を抱き締める。おれの腕にすっぽり収まっちゃう赤ちんの身体。さっきの行為の熱がまだ中でくすぶってるのか、すごく熱かった。






「ねぇ赤ちん。これからもおれだけのために泣いてよ。おれの前でだけ泣いてよ。ね? いいでしょ?」






言ってみたけど、赤ちんから返事は無い。どうしたんだろ。もしかして眠っちゃった? 不思議に思いながら顔を覗き込むと、赤ちんの瞳はいつの間にか閉じられてて、静かな寝息を立てていた。無理矢理な行為で身体を酷使したせいで、体力が無くなったのかもしんない。







まぁいいや。返事は後でだって聞けるもんね。今は寝かせてあげよ。おやすみ、神様じゃなくなった赤ちん。目が覚めた時、返事、聞かせてね。







「だーいすき、赤ちん」







呟いて、赤ちんの頬に唇を寄せる。まだ涙の乾いていないそこは、僅かに塩辛い味がした。




















DEGRADATION
(堕落した神様ってさ)
(その後、どうなっちゃうんだろうね)








初の紫赤が裏文ですまんww でも真っ先に浮かんだのが『赤司に反旗を翻す紫原』だったんだよその結果がこれだよ(^q^)



何がしたかったのか分かんなくなっちゃったけど、とても楽しく書けました! やっぱ紫赤プマイ!










栞葉 朱那

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