Right & gnorW
□モノトーン・クロウ
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遥か彼方、信じられていなかった世界は実際にあったのだ。
…とはいっても、神話などに登場する天使とは多少異なっていた。
進化は地上だけに限らないようである。
彼らはこう言った。
『人間の愚かな行いのせいで、我々の世界にまで影響が及んでいる。』
何より、このままでは人類は滅んでしまう。
天使達は人間に提案した。
『こんな状況では人間自ら破滅する。
そうなる前に、自分達と共存するのだ。遠い過去でも人間と天使は共に生きていたのだ。我々は人間達を守る事を約束しよう。』
人々は喜んだ。
世界中が歓声をあげた。
我々は助かる、救世主といえる存在が現れたのだ。
これで無駄な争いも無くなる。
それを阻止する者がいた。
――悪魔。
彼らは天使のように堂々とは姿を見せず、戦争を引き起こした人間の元へ現れ、闇へ導く。
『あんな話、本当だと思うか?事実だとしても、ここは天界とは違う。欲深い人間の世界だ。
そんなもんすぐに崩壊する。』
彼らの囁きは、人間達の心をとらえた。
『だったら、そんなもろい幻想にすがらずに自分達の力でなんとかしようぜ。力は貸すさ。』
これはあくまでも、彼らのシナリオの一部にすぎないのだろう。悪魔の考えは天使がよく知っている。
闇へ手招く悪魔を阻止すべく、その囁きに導かれる人間を天使達が引き止める。
もちろん悪魔が黙ってはいない。
平和が戻ると思われた世界は、二つに別れた。
黒と白の世界に。
誰もがそう思った矢先、どちらにも当てはまらない者が生まれた。
彼は天使を裏切り、悪魔と手を組もうとした。
理由は未だにわからない。
ところが悪魔は、繋ぎかけた手を振り払い、嘲笑った。
絶望する彼に、笑い声が言う。
『天使が堕ちたぞ! 白羽(しろはね)が天から堕ちたぞ!!』
悪魔を睨みつける彼の頭上から聞こえてきた声。
『裏切り者は殺せ! 裏切り者は殺せ!!』
血のにじんだ、純白の羽根が地に堕ちた日を境に、何人もの天使が彼と同じように地へと堕ちた。
闇の中で笑う悪魔を恨み、光で満ちる世界に背を向けた。
何故、天使が光を捨てるのか。
それは彼らしか知らない。
彼らは
堕天使。