FE短編集 〜華〜

□彼の笑顔
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「ふぅ…」

ベルベットは1人食事を抜け出して来ていた。タグエルの彼女には皆と同じ食事は合わないのだ。

「どうしたの?ベルベット」

食堂を出ていくのを見掛けたソールが追いかけてきた。

ソールを振り返ったベルベットが少し呆れ顔をした。急いで走って来たのか、髪がボサボサだった。いや、ソールの髪はいつもボサボサか。

「貴方、どうして着いてきたの?私のことは構わなくていいわ。皆と食事を続けてちょうだい」

「えぇ!?そんな事できないよ!言ったじゃない。仲良くなりたいって」

「…ーそぅ」

ベルベットは少しそっけない態度をとった。

「ごめん。僕が食事当番だったらベルベットも食べられる食事を作るんだけど…」

「あら、貴方が気にする必要はないわ」

「よし、僕今からちょっと何か作ってくるよ」

「―ちょっと!そこまでする必要ないわ」

予想外の言葉にベルベットが声を上げた。

「いぃや。ベルベットにもちゃんと食事を取ってもらわないと。体調崩しちゃ大変でしょ?」

「……」

「それに僕、もう食事終わってたしね」

そう言ってソールは笑いながら後頭部をかいた。

「―そぅ」

ベルベットは顔を綻ばせた。真っ直ぐで素直な黒い目、無理のない自然な笑顔。彼の、ソールの優しげな笑顔は自分を温かい気持ちにしてくれる。
彼は私の事を思ってくれている。今まで1人だったベルベットにとってはそれだけで嬉しかった。

ベルベットの笑顔を見たソールもまた優しい笑顔を返して、ちょっと待っててねと言うと厨房へと走っていったのだった。

タグエルは1人になってしまったけど、彼の笑顔があれば寂しくない。そう思えた。


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