番外編
□本命<義理
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昇降口に着くと、彼は何故か自分の下駄箱ではなくあかねの方へやってきた
「昨日移しといたんだよ」
と言って、彼女の下駄箱を開ける蛭魔
其処には2人分の上履きが入っていた
「何でこっち?」
蛭魔に上履きを取って貰い靴を履き替えながら、あかねはそう訊ねる
「あー…見てみろ」
と替えた靴を仕舞ながら、自分の下駄箱の方を指差す蛭魔
あかねが隣のクラスの下駄箱を見てみると、彼の場所だと思われる1ヶ所だけ異様に蓋が盛り上がっている
近づいて覗き込んで見ると、可愛らしいラッピングのされた箱達で埋め尽くされてた
「うわー、これ蓋開いたら雪崩起きるね」
「だからテメーの方に移しといたんだよ」
「是どうすんの?」
「知らねぇ。捨てるか糞デブに後で処理させるか…欲しいなら持ってって良いぜ」
そう言われたあかねはもう一度彼の下駄箱へ目を向ける
恐らく、匿名相手からの手作りではダメだと思ったのだろう。垣間見える包装紙は、どれもこれも有名なショコラ店のものだ
「本当に要らないの?ゴディバもあるよ」
「要らねー。下駄箱に勝手に入れていきやがったんだ、こっちも勝手に捨てたって文句ねぇだろ。顔も知らねぇ奴からのチョコなんざ、気持ち悪くて食えねーよ」
そう吐き捨てて、階段へと歩き出してしまった蛭魔
確かに、贈り主の解らないプレゼントが急に来たら気味が悪い
幾らバレンタインと言えど、彼からしたらこのチョコの山は差出人不明の不審な贈り物なのかも知れない…
「あかね!何してやがる、おいてくぞ!」
階段の踊り場に居た蛭魔から声を掛けられ、あかねは下駄箱から視線を外すと先を行く彼の後を追った
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