その他連載小説

□気高い百合
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「花沢さんお早よう!」

「お早よう花沢!」


登校すれば、間を開ける事なく掛けられる声

その一つ一つに彼女は当たり前の様に、胸を張って答えた


転校生、花沢百合。始業式にやってきた彼女の噂は、あっという間に麻黄中に広がった

珍しいハニー色の長髪に青い瞳、帰国子女を思い浮かばせるその容姿は、男子生徒のみならず女子にも好かれる程完璧なものだった

休み時間にもなれば彼女の事を知ろうとする生徒達が机の周りに群がり、その人垣は毎時間絶える事がなかった

「花沢さんって可愛いよね、彼氏居るの?」

「その髪って自毛?花沢ってハーフ?」

どの質問にも自信満々で答える百合

「彼は居ないわ、恋愛に興味がないの。勿論自然色よ、母がイギリス人なの。留学もしてたわ」

大企業を抱える花沢グループの令嬢の所為か、その態度には高飛車なとこがあるものの、それも納得出来る程に彼女はスタイルも頭脳も完璧だった

学年中が注目していると言っても良い程、彼女の周りにはいつも生徒達が居て話の中心人物

けど、その人集りも一瞬の内に散らしてしまう人物が一人だけ居た…

そう、蛭魔妖一。学校の支配者とも言える彼が教室に帰ってくると、蛭魔の隣にある百合の席には難を避ける為誰も近寄らなくなる

そして彼は、隣に居る百合に興味をまるで示さず、ずっとパソコンを弄ってた

いつだってその容姿と花沢グループの令嬢と言う権威で持て囃されてきた百合にとって、自分が隣に居るのに話掛けてこないばかりか視線を向けられない事など今の一度も無かったのだ

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