黒き月からの使者

□誘惑の前半戦
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あかねが観客席迄上がってくると、相手チームに桜庭が居る所為か広い球場にも関わらず何処も満席だった

席が無いなら立ち見でも良いかと、良い場所を探していたら

「よぉ…」
と声を掛けられ後ろを振り向いた

「…?!」

「おっと待てよ」

「離して!」

「連れねぇ事言うなよ。なぁ、あかね…」

阿含に腕を捕まれたあかねは必死に腕を振り払おうとするも力では適わない

「ビデオ撮んのに座るトコねぇんだろ?来いよ」

「大丈夫、立って撮るから」

「良いから来いって、始まっちまうぜ」

「ちょッ…阿含!」

あかねの手をグイグイと引いて通路を歩いていく阿含に連れて来られた先は神龍寺が陣取るベンチ

「アンタは…」

「お久しぶりです」

雲水にペコッと頭を下げるあかね

「座れよ」

ドカッとベンチに座った阿含は自分の隣に座る様に言ったので、あかねは仕方なく阿含と雲水の間に座った

鞄からビデオカメラを出すと、三脚を用意してカメラをセットするあかね。ビデオが終ると次は写真の用意を始める

腰に手を伸ばしてきた阿含に

「仕事の邪魔しないで、邪魔するなら今直ぐ帰る」
とあかね

「へいへい」
と阿含は軽く肩を竦めて手を離した

「全部1人でやるのか?」
と、デジカメ片手にビデオを覗いて画面を合わせてるあかねに訊ねる雲水

「ビデオは下でも撮ってるよ。でも上からのが解りやすいから…」

そう言うあかねが覗いていたビデオカメラを阿含が横から掠め取る

「何すんの」

「撮ってやるよ、フィールド全部から撮ったって解り憎いだろ?」

そう言って三脚を外すと

「一休!」
と言って、離れたとこに居た一休にビデオカメラを放り投げる阿含

「うわ!!何すか阿含さん」
と慌ててキャッチする一休

「試合撮れ、フォーメーション解る様に撮れよ」

「阿含、カメラを投げるな」

呆れた様に溜息を吐く雲水に心中で賛同しながらあかねは投げ捨てられた三脚を片付ける

「新しいマネージャーが入ったのか?」
と、下で働くマモリに気付いた雲水があかねに訊ねる

「先週の試合の時入ったらしいよ、私途中で帰ったから知らなかったけど」

一休に替えのテープを渡しながらあかねが答えると

「ならあんなカスチームはあの女に任せてこっち来いよ」
と阿含が誘う

「神龍寺女子禁じゃん」

「んなの気にすんなって、ジジイには俺が…」

「阿含!!」

「へいへい、わーったよ。煩ぇな」

雲水に叱咤され渋々身を退く阿含の隣、ビデオを構えた神龍寺生を見つけたあかねは

「進さんのプレー撮るの?」
と阿含に聞く

「ぁ?あぁ、進だけな」

「ならダビングして頂戴?」

「!…良いぜ、お前が俺と寝…「フォーメーションの写真焼き回しするからさ」

阿含をするりと交わし、雲水にそう持ち掛けるあかね

「…後日撮りに来い」

「ありがと雲水」


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