黒き月からの使者

□戦いの前に
2ページ/3ページ





「あわわわ…」

怯えるセナの目の前では、待ち合わせ場所に1秒でも遅刻してきた4人が蛭魔により例のハチマキを着けさせられていた

セナ達選手が乗る為のリアカー2台と、ケルベロスへ繋がれてる荷物を積んだ1台

是から起る事は容易に想像出来た

「あかね早く乗れ、出発すっぞ!」

蛭魔にそう言われ、ケルベロスと遊んでいたあかねは立ち上がって蛭魔の居る前方のリアカーへ

「…!」

しかし何かに気付き途中で足を止めた

2台のリアカーは、蛭魔の居る前方もセナとマモリの居る後方も既に満員状態で、細身のあかねでさえ乗るスペースが無かったのだ

「私ケルの方に…」
と、あかねは身を翻してケルベロスの引く荷物が山積みになったリアカーへ向おうとするが、その前に蛭魔があかねの首根っ子を捕まえヒョイッと自分の居るリアカーへ引き上げてしまう

「喋るな舌噛むぞ…」
と、あかねを自身の膝の上へ乗せた蛭魔は何処からか取り出した鞭を使って遅刻4人を走らせた

あかねが傍に居なくなった途端目の色が変わったケルベロスは、涎を滴らせながら額に骨付きハチマキを巻いた4人を追い掛け始める

人力とは思えない速度で走るリアカー2台は、ガタガタッと物凄い後を立てて揺れていた

「ッ…」

捕まる場所のないあかねは躰を支えられず、ぐわんッと躰が後ろへ引っ張られる

スッ…

「…!」

後頭部に伸びてきた手がその儘あかねを引き寄せた

「よ…」

「掴まってろ…」

蛭魔の胸に抱き寄せられたあかねは、言われる儘彼にしがみ付いてた



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ