黒き月からの使者

□光速の男、初陣
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転倒した石丸がベンチに運ばれてくる

「石丸さん大丈夫ですか!?」
と慌てて駆け寄るセナ

「捻挫してるかも、足出して」

救急箱を手にしたあかねは冷静に状況を把握し、石丸の手当てに当った

恋ヶ浜の先攻で始まった試合は均衡し、どちらも得点無しの儘第4Qも後約20秒に差し掛かってた

キックで得点を狙う恋ヶ浜に対し蛭魔はキックを失敗させる為石丸に走らせキッカーにプレッシャーを掛け様としたのだが、石丸は踏み込みと同時に転倒、キックは成功し恋ヶ浜に得点を許してしまったのだった…

「是痛い?」

「いッ!?」

「思いっきり捻ってるね。是じゃ走れない…」

足首に湿布を貼りって包帯を巻いていたあかねは、ふと石丸のスパイクに目を遣った

「…、人工芝用…」

「あぁ゙?人工芝用だと!」

つかつかと歩いてきた蛭魔が石丸の足ごとスパイクを確認する

それは紛れもなく人工芝用のスパイクで…

「テンメェーッ糞主務!スパイクの種類くらい見分けやがれ!!」
とセナを睨み付ける蛭魔

「ひぃぃ!!ごめんなさい!!」

「ともかく死刑にしてやる!」

そう言ってセナの後ろ襟を掴んで校舎裏へ向おうとする蛭魔に

「妖一待って!」
と、あかねが慌てて駆け寄り蛭魔の腕を掴んで制止する

「私がいけないの。セナ君にちゃんとスパイクの見分け方教えなかったから…だからセナ君は悪くない」

許してあげて…と、静かに蛭魔を見上げるあかね

彼は何も言わず無表情にあかねの視線を受け止めていたけど、不意に口角を釣り上げて怪しく笑った

「!…」

彼の突然の笑顔に、あかねは蛭魔の腕を掴んでいた手を離してしまう

あかねの手から解放された蛭魔はセナを引き摺り校舎裏へ

「あかねちゃんどーしようセナ君が!」
と、栗田が彼女の後ろでオロオロとセナの心配をするけど

「大丈夫だよ…」
と微笑むあかね

「え…?」

「妖一に任せて大丈夫」

そう言ってあかねはベンチへ戻ると、蛭魔の書類鞄を漁り何かを探し始めた

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