黒き月からの使者
□始まりの詩
1ページ/3ページ
此処はとあるバー
まだ昼前だと言うのに照明の所為か店内は薄暗く、既にカクテルを呷っている客も居る
そんな店の一番奥の台で、一人ビリヤードをする娘が居た
何処かの制服に身を包み、未成年だろうが白昼堂々ゲームをしている
そんな彼女に目を付けた若い2人組の男が、グラスを研くマスターに話し掛ける
「ねぇ、あの子マスターの知り合い?紹介してよ」
マスターは男が指差した方向に視線を向ける。示された娘の姿を捉えたマスターは静かに首を振った
「あの子には手を出さない方が良い。痛い目みるよ」
マスターの言葉に疑問符を浮かべる若者達
「…マスター、今日はもう上がるね」
ボールを片付けた娘は、キューをマスターに渡してお金をカウンターに置いた
「何か飲んでくかい?コーラくらいは出すよ」
そう言いながらコップを用意し始めたマスターに首を振って断る
「直ぐ学校行かないと怒られる、部活あるって連絡きたから」
「そういえば今日は迎えが来ないみたいだね。送ろうか?」
「マスター、まだ昼前だよ?」
「あぁ、そうだったね。一日こんなところに居ると、どうも時間が分かりづらくていけない」
困った様に笑うマスターに微笑んで、鞄を肩に掛けると娘は出口へ
「いってらっしゃい。あの金髪の彼にも、たまには遊びにおいでって伝えておくれ」
マスターの言葉に頷いたその娘は、薄暗いバーから太陽が照らす明るい町へと出て行った
[始まりの詩]
.