黒き月からの使者

□始まりの詩
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此処はとあるバー


まだ昼前だと言うのに照明の所為か店内は薄暗く、既にカクテルを呷っている客も居る



そんな店の一番奥の台で、一人ビリヤードをする娘が居た


何処かの制服に身を包み、未成年だろうが白昼堂々ゲームをしている

そんな彼女に目を付けた若い2人組の男が、グラスを研くマスターに話し掛ける

「ねぇ、あの子マスターの知り合い?紹介してよ」

マスターは男が指差した方向に視線を向ける。示された娘の姿を捉えたマスターは静かに首を振った

「あの子には手を出さない方が良い。痛い目みるよ」

マスターの言葉に疑問符を浮かべる若者達

「…マスター、今日はもう上がるね」

ボールを片付けた娘は、キューをマスターに渡してお金をカウンターに置いた

「何か飲んでくかい?コーラくらいは出すよ」

そう言いながらコップを用意し始めたマスターに首を振って断る

「直ぐ学校行かないと怒られる、部活あるって連絡きたから」

「そういえば今日は迎えが来ないみたいだね。送ろうか?」

「マスター、まだ昼前だよ?」

「あぁ、そうだったね。一日こんなところに居ると、どうも時間が分かりづらくていけない」

困った様に笑うマスターに微笑んで、鞄を肩に掛けると娘は出口へ

「いってらっしゃい。あの金髪の彼にも、たまには遊びにおいでって伝えておくれ」

マスターの言葉に頷いたその娘は、薄暗いバーから太陽が照らす明るい町へと出て行った








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