黒き月からの使者
□基礎と人海戦術
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「で?栄光グラウンドからルート覚えながら走って帰ってきたのか」
「そ、結構面白かったよ」
次の日、部室に来ると武蔵工務店が改築工事を行っていた為、あかねはムサシを捕まえて昨日の事を話していたのだ
「「あかねさんお早ようございまーす」」
と、続々と部員達がやってくる
「何作ってるんですか?」
「ロッカールーム」
ペラッと、蛭魔は予定されたデザインの紙を皆に見せる
「一週間で建たねーか」
「無茶言うな。コンクリも乾かねぇよ」
そう言うムサシの言葉に蛭魔は
「よし人海戦術だ。テメーらも働け!」
と、ダン!とマシンガンの柄を地面に叩きつけた
「「えぇぇぇー」」
「丁度トレーニングになんじゃねぇか、土木作業!基礎体力の鍛練だ!」
と言って、彼は皆に作業着を投げ渡した
斯くしてデビルバッツは全員で現場作業をする事になったのでした
持久力の居る力仕事に、まだ5月と言えど照りつける陽の光に嫌でも体力は奪われていく
「ふーッ…」
まだ粉末のコンクリートが入った土嚢袋を運んでたあかねは、肌に張り付くTシャツをはたつかせて軽く涼を得る
「顔赤いぞ、大丈夫か?」
「…!」
急に声を掛けられ後ろを振り向くと、材木を担いだムサシが居た
「大丈夫、大丈夫」
「お前迄手伝う必要ないんじゃないか?」
「でもマモリさんも手伝ってるし。それに、結構楽しいから…」
目の前では、皆泥に塗れながらも一緒になって作業をしている。それを見ながら、あかねは嬉しそうに微笑んだ
そんな彼女にムサシは
「ま、無理はすんなよ」
と、ポンッとあかねの頭を軽く叩いて材木を運んでいった
あかねはムサシの背を見送ると、足元に置いた土嚢袋を持って止めていた歩みを進める
そうして朝練の時間は全て土木作業に費やされた
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