君と僕との物語

□第十話
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行事だらけの時期になりました。
只今、学校祭のクラス企画を何にするか、話しています。

この高校の学校祭は二日間。

一日目は全体発表。
今年は合唱とライブだったかな。
あとは部活動の展示とか色々。

問題は二日目の一般公開日。
今話してるクラス企画を、この日にやる。
やるのはバザーとか喫茶店とかお化け屋敷とか…。
学校に不都合がない限りで、好きなことをやっていいらしい。


「永倉と沖田が女装して喫茶店とかはー?」
「却下」


いきなり何を言い出すのか。
女装なんて冗談じゃない。
だいたい何を着せる気でいるのか…。

このクラスの奴らは、絶対に信用しちゃいけない。


「ぱっつぁんの女装…見たいなぁ〜」
「黙れ馬鹿平助」
「ごめんなさい」


それに、と言って、平助の耳に口を寄せる。
小さい声で呟いてみる。


「平助以外に見せてもいいの?」


離れて、笑ってみせる。
平助は悔しそうに口を尖らせてる。

少ししてから、諦めたようにため息を吐いた。


「…ぱっつぁん、強くなったよね」
「それはどうも」


二人だけでクスクス笑う。
周りの奴らはなぜか必死に総司を説得してる。
平助も総司の方を見る。

最近、やっと寝れるようになってきた。
それは多分、平助のおかげ。
平助のことで悩んで寝れなかったはずなのに。

悩んで寝れなくて
急いで答え出そうとしたって

平助は、喜ばないから。


「なー、永倉頼むって!」
「嫌です」


せっかく嬉しい気分になってたのに邪魔された。
しかもしつこい。


「永倉と沖田は飲み食いタダでいいから!」
「えー…」


この喫茶店内でならってことだろうけど。
飲み食いタダは…魅力。


「んー…じゃあ平助と左之が一緒なら」


クラス中喜んだ顔になって。
それは一瞬で、凍る。


「…藤堂と原田が、女装?」
「お馬鹿。女装しろとは言ってないでしょ」


みんなそろって、あぁ、と納得。
このクラスは馬鹿ばっかりみたいです。

いや、知ってたけど。
馬鹿は嫌いじゃないけど。


「ぱっつぁん…なぜ俺と左之?」
「ん?男からも女からも人気あるし」
「…男に人気あったっけ、俺」
「あるよ」
「そうなんだ…何か複雑」
「お前がそれを言う?」


男に告白した奴が。
俺だって複雑だっての。
ただ、平助だから…。

…平助だから、なんだ?


「じゃあ永倉前半、沖田後半で!」
「へ?あぁ、うん」


女装は二人だけ。
今度はウェイター決め。

平助が、身体ごと俺の方を向く。


「ぱっつぁん、休憩入ったら一緒にまわろ?」
「…奢ってくれんならいいよ」
「え…」


ニッコリと笑ってみる。
無言の脅迫。
これで俺に勝てる奴はあまりいない。
平助もたまに、俺に使ってくる。

けど、俺らの場合。
大抵は仕掛けた方の勝ち。


「…二品までなら…」
「たこ焼きと焼きそばで」
「りょーかい」
「学祭あんま金使わなくて済む」
「そーですねー」


読み通り、俺の勝ち。
でも、平助がふてくされてる。
…しょーがないなぁ。


「へーすけ」
「んー…」
「俺、平助のこと嫌いじゃないよ」


バッとこっちを向く。
予想通りの反応。
照れたのか、少し頬が赤い。


「ぱっつぁん、ズルい…」


そう言って、平助が立ち上がる。
俺の横にくる。

そのまま、思いっきり抱きつかれる。
予想外。

みんなの注目を浴びてる。


「ッ馬鹿!離れろ!!//」
「ずーるーいー…」


聞いてない。
離れてくれない。
重い。
恥ずかしい。


「左之、助けろッ!」
「んなことしたら俺が襲われるだろ」
「ぱっつぁんと違う意味でね」
「せめて左之と同じ意味にしろ!」
「ぱっつぁん…マゾ?」
「違うッ!!//」


なんとか自由になった手で、平助を殴る。
みんなは笑ってる。
平助は涙目で頭をさすってる。

このやろう。
ちょっとドキドキしたじゃないか…。


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