君と僕との物語

□第九話
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先輩たちに襲われそうになった日は
帰ってから何十分もシャワー浴びて
何度も泣いて
少しだけだけど、すっきりした。

ただ、一つだけ気がかりなのは。

平助の笑顔が、少なくなったこと。
そして俺に触れなくなったこと。

おかげで
前より余計に、寝つきが悪くなりました。


「左之〜…」
「何だよ」
「も、わかんない…」
「…平助か?」
「それもだけど…」


平助のこともそうだけど。

自分の心も、わからない。
平助に答えを出してあげられない。

このまま平助を問いつめていいのかも、わからない。

それに
俺に触れたくなくなる理由なんて
いっぱい、ありすぎて。


「泣きそうな面するくらいなら、平助に言えばいいだろ」
「何を?」
「お前が今悩んでること全部だな」
「全部…」
「行き帰りは一緒なんだろ?」
「うん」


傍にいるって言葉は、今も守られてる。

一緒に登下校してるし、話もする。

だけどこのままじゃ、多分何も変わらない。
ずっと気まずいままかもしれない。
そんなの…嫌だ。

左之も心配してくれてるから
放課後、平助に理由を聞いてみることにした。


「ね、平助」
「ん?」
「最近、あんま笑わないよね」


平助の動きが、止まる。
ゆっくり、こっちを向く。


「それに…俺に、触れない」


そう言ったら、平助の目が泳いだ。
目を伏せて、何かを考えてるみたいで。

いつもはまっすぐ見てくれるから
不安に、なる。


「…俺のせい?」
「え?」
「汚いから…もう、好きじゃない?」
「ッ違う!」


弾かれたように、顔をあげる。
ちゃんと、俺を見てくれる。


「汚くなんかない。ぱっつぁんは綺麗だよ」


でも、じゃあなんで?
恐くて、言葉にできない。

黙ってたら、平助から理由を話し始めた。


「あいつらに触られて、気持ち悪かったでしょ」
「…うん」
「俺が触れたら、新八っつぁん…壊れる」


壊れる?
平助が触れて、俺が?


「平助の手、落ち着くよ?」


落ち着くんだ。
なんか、あったかくなって。
ドキドキするけど、それ以上に。

俺の言葉に、平助は一瞬驚いたような表情をして。
でも、すぐに苦笑いに変わった。


「…それに、抱きたくなるんだ、ぱっつぁん見ると」
「へ…?」
「シたいって思っちゃうんだ。傷付けたくないのに」
「へ、すけ…」


抱きたく、なる。
この間の先輩たちみたいに?
平助が…俺と?


「ごめんね。もう、平気だから」


そう言って、抱きしめられる。

平助が触れるのは
俺のこと…好き、だから。

先輩たちが触れたのは
ただ、欲を満たしたかったから。

先輩と平助は、違う。


「平助…」
「ん?」
「ありがと」
「…ありがとう?」


我慢させてごめんなさい。
答え待たせてごめんなさい。

助けてくれてありがとう。
好きでいてくれて、ありがとう。

見上げると、平助は不思議そうに首を傾げてる。


「ありがと、平助」
「…どういたしまして」


おかしくて、思わず吹き出す。

抱きたいって思われんのは微妙だけど。
俺、一応男だし?

でも好かれるのは、嫌じゃないし。
答え出るまで、待って下さい。


「…変なぱっつぁん」


平助が小さくため息を吐く。

好きとか抱きたいとか言われて、笑ってる。
しかも言った言葉は、ありがとう。
うん、確かに変だ。

まぁとりあえず。
今は楽しいから、いっか。


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