君と僕との物語

□第八話
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平助が助けに来てくれたおかげで
あの三人の好きにされずに済んだ。

今は平助と帰ってる最中だけど。
さっきのことが頭から離れてくれなくて。


「新八っつぁん、平気?」
「…うん」
「本当に?」


まっすぐに見つめられて。
目を合わせられなくて。

平助の、足が止まる。
身体ごとこっちを向く。


「嘘、つかなくていいんだよ?」
「平助…」
「我慢しなくて、いいんだよ?」


いつもより、優しい声。
途端に、目の前の平助が涙で歪んだ。


「へー、すけぇ…っ」


抱きついて、声を殺して泣いた。
平助はずっと、俺の髪を梳いててくれて。

泣きやんでから、平助に弱音を吐いた。


「恐、かった…」
「行くの遅れて、ごめん」


知らなかったハズなのに、平助は来てくれた。
助けてくれた。
なのに、平助は謝る。
もっと早くつけてたらって。

平助は知らなかっただけなのに。
来てくれて、嬉しかったんだ、すごく。

一生懸命笑顔を見せて、平助を見る。


「新八っつぁん?」
「ホント、だね」
「え?」
「俺つらい時、傍にいてくれる」


平助が一瞬、驚いて目を丸くする。

背中に腕をまわすと、平助の心臓の音が響いて。
なぜか、それに安心する。


「…一人で、平気?」
「うん」
「嘘じゃない?」


心配そうな表情。

一人で平気かと言われたら、そうじゃない。
平助が助けてくれたから。
つらいけど、嬉しかったから。


「明日、迎え来てくれる?」
「うん、来るよ」
「じゃあ、平気…待ってる」
「…わかった」


平助から離れ、顔を見上げる。
安心させるように微笑まれ、髪を梳かれる。


「明日は、早めに迎えくるから」
「うん」


笑って、平助に背中を向ける。


「新八っつぁん!」
「え…?」

「何かあったらメールして!夜中でも飛んでくるから!!」


大きい声出さなくても聞こえるのに。
きっと平助も、悔しいの、我慢してるんだ。

平助の言葉に頷いて、また明日ね、と手を振る。

そのまま、俺が家に入るまで
平助はその場から動こうとしなかった。


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