君と僕との物語

□第六話
1ページ/1ページ

七月下旬。
今日も平助くんは元気です。


「ぱ〜っつぁん!」
「ぅわっ…な、何?」
「一緒帰ろー」
「あ、…うん」


呼ぶなら呼ぶで、抱きつくのはやめてほしい。
いきなりは、驚くし。
それにやっぱ恥ずかしい…。


「何か用事とかあった?」
「あ…ううん、平気。帰ろ」


笑顔でごまかしてみる。
なんか変に思ったみたいだけど、深く聞いてきたりはしない。

てか、今みたいに平助と帰るのは…恥ずかしい。
今まで通りでいいって平助は言うけど。
そんなの、できるなら苦労しないんだよ、馬鹿。


「ね、新八っつぁん」
「え?…ぁ、」
「聞いてなかったでしょー」
「ごめん…」


顔をのぞき込まれる。
なんか最近のぞき込まれすぎじゃない?俺。
ちょっと心臓に悪いんだよなぁ。


「新八っつぁん、何かあった?」
「何も、ないよ?」
「俺と帰りたくない、とか…」

「ッ違うよ!」


別に、平助と帰りたくないわけじゃない。
そりゃちょっと気まずいけど。
嫌じゃ、ない。

じーっと見つめられる。
平助なりの、真偽のはかり方。

不意に、平助が微笑う。


「言いたくないなら、聞かない」


平助がそう言ったと同時に、俺の家についた。
優しく頭を撫でられる。


「新八っつぁん」


名前を呼ばれて、平助を見上げる。
そこには、心配そうな表情をした平助がいて。


「ちゃんと、寝てね」
「え?」


頭を撫でていた手が、頬に触れる。
そのまま、目の下を指でなぞられる。

目の下にクマ、できてたかな…。


「俺のせいだよね…ごめん」


確かに、よく寝れないのは平助のことを考えてるから。
でもそれは、ちゃんと考えなきゃって思うから。
全く寝れないわけじゃないし。

平助が悪く思う要素なんてない。
そう意味を込めて、首を横に振る。


「ぱっつぁんは、優しいから」
「なんの、話?」


平助が笑う。
きっとまだ、気にしてるだろうけど。


「じゃあまた明日ね、ぱっつぁん」


いつもと変わらない笑顔で、平助が手を振る。
平助が角を曲がるのを見届けてから、俺も家の中に入った。

あいつに心配かけないように。
今日はぐっすり、寝れるといいな。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ