短編小説

□First love
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「…オレって、こんな物持ちよかったっけ…?」




机の中から出てきた、思い出の一つ。
小さい頃の、オレと平助だけの、思い出。



「幸せになる、ねェ…?」




クローバーを、窓の外の太陽に翳して。
少し眩しくて、目を細めた。

昔の平助の笑顔が頭の中に浮かんで、
何故か、途端に顔が熱くなった気がした。


なんで赤くなってるんだ、と自分で問いかけても、熱は治まらない。







「…ぱっつぁん?なにやってんの?」
「ぇ…」



後ろを見ればそこには、
思い出の中の平助よりずっと大きくなった平助の姿。





「ぅわ…、いつの間に戻ってきたのョ…!?」




平助はさっき、ここはオレの家なのに
ジュースを代わりに持ってくるといって下に行って。

オレは探し物を探すために机の中をあさっていて。
その時に偶然、しおりにしたソレを見つけて。

すぐ後ろなのに、ドアの開く音に全く気がつかなかった。





「ぱっつぁん、それ…」
「…ぁっ、」



気付いてすぐ背中に隠したけど、
平助相手にそのスピードは遅すぎた。
もう、平助の目に『何か』が映ってしまった後だ。




「…みせて?」
「ぅ…」
「ぱっつぁん」
「ッ…笑わ、ない…?」
「なんでオレが笑わなきゃなんないのさ」
「そうだけど…」




差し出してきた手におとなしくしおりを渡すことにした。

平助はしおりを手にとると、何故かオレを抱きしめて。
その体勢のまま、しおりを見始めた。


「ちょっ…平助…!」
「これ、小さい頃オレがあげたやつだよね?」
「そう、だけど…ッ」




離せといっても、一向に離してくれる気配を見せない。


もちろん新八も、
離してくれないことは長年の経験でわかってはいるが。




「お願…、離してョ…ッ」
「ぱっつぁん、心臓の音、速いよ?」



クスクスと笑って、オレの胸に手を当てる。




「っだから、離せっていってんでしょ…!?」
「いーや!」
「ッ…バカ!」
「ね、新八?」
「…何、」
「ずっと、持っててくれたんだ?」




平助の方を見上げれば、
平助は本当に嬉しそうな顔で微笑っていた。

あの頃はオレより小さかった平助が

いつ頃だろう。
身長もオレより大きくなって
オレの中での平助の存在も。

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