短編小説
□甘い夢
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暖かい陽射しに包まれる中
新八は、自宅のソファで眠りに落ちていた。
そんな中、平助がいきなり、新八の家を訪れた。
甘い夢
「新八っつぁ〜ん♪」
明るい声と同時に、ドアが開いた。
もちろん新八は、夢の中を漂ったまま。
「…って…いないの〜?……ぁ」
そこでやっと、新八を目の端に捉えた。
ソファの上で、気持ちよさそうに眠っている新八の姿を。
「不用心だなぁ〜鍵もかけないで…」
ノックもせずに勝手に入ってきた張本人が、そんなことを言う。
毎回、勝手に入っては新八に怒られているが、
それでも平助はへらへらと笑って、また次の時には勝手に入ってくる。
そんな平助に、新八は諦めたのか、もう何も言わなくなっていた。
平助はそのまま新八に近づき、隣にしゃがみ込んだ。
「カワイイ〜…」
クスクスと笑いながら、顔を覗き込む。
新八は滅多に人に無防備な姿を晒さない。
それ故に、平助はこのまたとない機会を心の底から喜んでいた。
「夢、見てるのかな…」
微笑み、優しく新八の髪をなでる。
すると新八はくすぐったそうにはにかんで、平助の名を呼んだ。
「へ…すけ…」
「え……」
一瞬、新八の髪を梳く手を止める。
起きたのかと思い、平助は耳を澄ます。
先程と変わらず、規則正しい寝息が聞こえるだけ。
「…オレの夢、見てるの?」
平助の顔から、嬉しさがにじみ出る。
普段の新八は、恥ずかしいせいかこんな行動はほとんどとらない。
「オレの夢、見てくれてるの…?」
寝ているとはわかっていつつも、
平助は小さく問いかけて
一度止めた手を、また新八の髪に絡め始めた。
「ん…、…平助?」
暫くそうしていると新八が目を覚まし、
まだとろんとした、夢見心地な瞳で平助を見上げた。
「あ、新八っつぁん起きた?」
「ぅん…って、え?……平助ッ!?」
「うん、平助です。ビックリしたー?」
大きく驚きの声を出して起き上がる新八に、
平助はいつもの笑顔で、手をひらひらと振って見せた。
「…ッじゃなくて!なんでいるの!?」
すぐに平助から離れ、この状況にあれば誰でも持つような疑問をぶつけた。
が、平助は質問には答えず、また新八に近づき、抱きしめた。
一瞬で新八の頭の中が真っ白になる。
「うぁッ…ちょ、平助!」
「あははー新八っつぁんふわふわ〜!かわいー」
「人の話を聞けー!」
もちろんそう言われても平助に話を聞く気はない。
今平助の頭の中は、ただ新八に触れたいのと、
新八をからかうことでいっぱいだった。
「ね、新八っつぁん。オレの夢見てたでしょ」
さっきの新八の顔を思い出しながら、ご機嫌に新八の顔を覗き込む。
新八は間近にある平助の顔に顔を赤くしながら、平助の質問に動揺する。
「なッ…なんでお前の夢なんかッ!!」
「あ〜顔赤い!やっぱ見てたんだぁ!
嬉しいなぁ〜新八っつぁんがオレの夢見てくれてたなんて…」
「〜〜〜ッ!!」
一人で納得している平助を見て、
新八は大きな目で睨むことしかできない。