復活 雲雀恭弥




「……何やってるの?」

『何やってるように見えます?』



ポタリ ポタリ ポタ、リ
全体が何所か重苦しく、灰色の部屋で彼女は泣いていた。両手を真っ赤に染めて、苦しそうに。
何故泣いているかなんて聞くまでもない。今の彼女を見てわからない奴がいたら顔を見てやりたいよ(咬み殺してあげる)



「泣いてる」

『……そうですね、泣いて、ます』



どこか不満そうに呟きながら、彼女はまた泣いた。嗚咽を必死に飲み込む姿が痛々しい。
両手に抱えた愛用のジャックナイフを抱きしめて、(ああ、そんなもの棄ててしまえばいいのに)肩を小刻みに震わせて、(止めてよ、そんな奴の為に君が泣くことなんてない)

ナイフの鞘に巻かれていた淡茶のボロ布がはらりと床に落ちた。
喉に短刀を突きたてられているかのように喘ぐ彼女を驚かせないよう静かに近づき、そっとそれを拾う。カラカラに乾き硬くなり、それでも何故か濡れているように感じたのは、きっと、(彼女が泣いている理由と似通っている)


 嗚呼、(この僕が泣くなんてそんなことはあり得ないのだけれど)
たとえば世界が白いものだけで構成されていたとしたら僕も君もこんなに苦しまずに済んだのだろう。それともそれすらも灰色だと思ってしまうのだろうか(それは、)濃恢色の絨毯に何か大切なモノが沈んでいく気がした。



『泣いちゃいけないんです、私は』

「何で?くだらないこと言ったら、」



その続きは敢えて口にしなかった(君の求めるものを僕は知っているから、)
泣きやんで欲しいと思う反面泣きやむなと思っている僕がいたことは否定出来ない。確かに泣いている彼女は誰より美しかったから。背筋を這うぞくぞくとした感覚に残酷な何かが満たされていく(もっと、もっと、もっと、)
本当に泣きやんで欲しいと僕が望んでいるならば、幾らでも彼女を泣きやませる術を僕は持ってる(それをしないのはそれをやってしまった後の結末の想像が容易いからだ)

そう、最も簡単な方法は、僕がいつものあの口癖を彼女の耳元に囁いてやることだと、(知っているんだずっと前から)



『ひばりさん、』

「………」

『雲雀さんは、優しすぎて残酷ですね、』



彼女が再び泣きそうになりながら紡ぎ出した言葉に胸が切り裂かれたような気がした。
















勘違いしないでよ、君を殺すことになんて何の躊躇いも戸惑いもないんだ



ただ、苦しいだけ






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ありがとうございました!レスは365にて



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