絵本

□豆腐と恋人
1ページ/2ページ


今夜の夕食は土方さんがつくってくださる

何故か今日は自分がつくると言って引かなかったのだ

せめて手伝いでもと申し出たが断られてしまった


「……午後8時、か……」
土方さんにあまり早く帰ってこないようにと言われたが、このくらいの時間なら大丈夫だろう


俺は土方さんの待つ家へ帰ることにした


部屋に入ると美味そうな匂いが立ち込めていた

着替えを済ませリビングへと向かう

そこには

キッチンで豆腐と格闘する土方さんとたくさんの豆腐料理があった




「……土方さん、これは……一体……」

土方さんに尋ねる

「……っ…!?斎藤?!もう帰って来ちまったのか…!!?」

帰宅したことに気づかないなんて珍しい


「もう8時ですが……まだ早かったですか?」

一応聞いてみる

まだ時間がかかるならその間に色々やろうと……

「……いや、もうすぐ出来るから……少し待っててくれるか?」

俺は頷いた



しばらくして

「待たせちまって悪かったな」

土方さん特製豆腐料理が出来上がった


「食べていいですか?」

土方さんの許可を得て食す。

「美味しい」

俺の言葉を聞き土方さんは嬉しそうだ



夕食後


俺は気になっていたことを土方さんに尋ねた


「土方さん、どうして今日はあんなにたくさん豆腐料理をつくってくださったのですか?」

土方さんはほんのりと頬を染めていた

「……今日、豆腐の日……らしいんだ。斎藤、豆腐好きだろ?…だから……」

ああ、なんて可愛らしい方なのだろう


「俺の為だったのですね。嬉しいです」

素直に気持ちを伝える

「俺の為にしてくださったなら、きちんとお返しをしなければね」

俺の言葉に土方さんは若干期待の意を込めた眼差しを俺に向けた
おそらく、俺の言う「お返し」が何か大体予想がついているのだろう


「さ、ベッドへ行きましょう?それともバスルームがいいですか?」

土方さんの腰を引き寄せながら耳元で囁く

「任せる」

俺に寄り添いながら土方さんは答える



長い長い夜の始まりです



→あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ