書斎

□不安と鈍感
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自分の方を見て話している少年たちを気にしていると、別の方向から自分や彼らと同じ色の制服を着た少年がやって来た。





「よう!見かけない顔だけど、お前編入生か?」

「ぇ…あ、はい!」


ヤバい!いきなりピンチが…
どうにか女とバレないようにせねば。



「大丈夫か?なんか顔色悪いけど…」

「平気です!」


ふーん、とこちらを見る少年。
よく見るとかなり特徴的だ。

ボサボサの髪の毛、太い眉毛。

同年代の男を見たことがなかったため、潤はまじまじと彼を見る。




「?俺、なんか変か?」

はっとして首を振る。潤は緊張のピークにいた。
すると少年は…


「じゃあ、とりあえず自己紹介な。俺は竹谷八左エ門。」

「神郡潤です。よろしく…」

「敬語じゃなくていいよ、潤。俺のことは好きに呼んでくれ!」




バレて…なさそうだ。
これならうまくやっていけるかもしれない。
潤は少し安堵した。


「あぁ、わかった八左エ門。」

名前を呼ぶと八左エ門はニコッと笑い握手をした。
彼の笑顔に救われた気がした。





「ところで八左エ門。ぼ…僕の部屋を知らないか?」

慣れない一人称でぎこちないかんじになってしまった。が八左エ門はまったく気にしていない。
…鈍いのだろうか?



「潤の部屋?そういえば潤はクラスどこなんだ?」

「五年い組。」

「あ―、い組かぁ…。ろ組なら俺たち同じクラスだったのに。」

八左エ門はがっかりした。
せっかく知り合ったのにと。



「まぁ、会いにいけるし、食堂とかで一緒になるしいいか!」

ハハハッと笑う八左エ門。
いや、こちらはそれどころではないのだが…。



「で、僕の部屋は?」

二回目は難なく言えた。


「俺は部屋までは分からんが、長屋までなら案内するよ。」














八左エ門に案内されて忍たま五年生が暮らす長屋にやって来た。

学園長が手を回してくれたのか自分の部屋は皆とは少し離れた空き室だった。


八左エ門が荷物の整理を手伝うと言い出して、あわてて断った。

女物の着物やらなんやらを見られてしまったらおしまいだ。



「そうか?まぁ、困ったことがあればいつでも言えよ!」

八左エ門に肩を叩かれた。

「あぁ、わかった。」

嬉しかった。右も左もわからない今、そんな気遣いが心にしみた。













――夜

「寝れない…。」

明日から、本当に周りは男しかいない環境で暮らすことになる。

バレてはいけない

このことが潤に不安を与え続けていた。





そして…
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