書斎

□不安と鈍感
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書類の記入と忍術学園の説明を受けたあと、潤は割り当てられた自室に向かうことにした。


事情が事情なだけに、はなれの長屋に住むわけにもいかず、普通の忍たま長屋の空き室に暮らすことになった。



「広すぎる…」

慣れない場所なためなおさら疲れる。とりあえず近くの木の下に座ることにした。



自分自身のことでわからないことが多い。
爺やもなにも言わずに勝手に私を忍術学園に預けた。しかも…
男装なんて。



潤が思いふけっていると



かーん…

鐘の音がした。



同時に辺りが騒がしくなってきた。

授業が終了したようだ。
ぞろぞろと生徒が校舎の中から出てくる。




視線を感じる。
遠目に見ると、自分と同じ色の制服を着た少年が一人こちらを見ていた。











「あんな奴いたっけ?」

五年ろ組の鉢屋三郎は少し離れた木の下に座っている少年を不思議に思った。

見たことのない顔だ。
…話しかけてみようか?


三郎はどんな悪戯をしてやろうかと考えだした。


「三郎、なにしてるんだ?」

三郎の前に彼と同じ顔の少年が立っていた。

五年ろ組の不破雷蔵だ。


雷蔵は三郎の視線の先を追った。




「誰だろう?五年の制服着てるけど…。編入生かな?」

「さぁな。ちょっと挨拶してやろうと思って。」


三郎はニヤッと笑う。雷蔵はそんな三郎を見て溜め息をついた。




「おーい、二人とも!」

遠くから呼びかけられて振り返ってみるとそこには二人の生徒がいた。


一人は濃い茶髪の少年。呼びかけた張本人だ。

もう一人は長い黒髪の少年。特徴のあるな眉毛が印象的だ。


五年い組の尾浜勘右衛門、そして久々知兵助である。



「どうかしたの?」

「いや、あそこに見知らぬ奴がいるんだ。」


三郎は木の下の少年を指差す。

確かに、と勘右衛門。


「なぁ、勘右衛門。もしかしてあいつがそうなんじゃないか?」

「あぁ!そうかあの子が。」


雷蔵と三郎はい組の会話についていけない。



「兵助、あいつはなんだ。」

三郎は尋ねた。



「編入生だ。明日からい組の生徒になる。」

「さっき学園長から聞いたんだよね!」


二人はどこか楽しそうだった。
三郎は素直に喜べなかった。それは…



「突然すぎやしないか?編入生がくるなら、噂になってもおかしくない。なのに…」

「確かにね。」


雷蔵も同じ考えのようだ。



「まぁ、明日詳しい話しを聞くと思うし、いいじゃないか。」

兵助は三郎を見ながらそう言った。




そんなことを話しているとき…
編入生に誰かが近づいて行く。





「あれって…八左エ門かな。」
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