□猫の日
1ページ/2ページ

「あ、見つけた!」
明るい声が自分を指していることに気付いてヤマネコは顔を上げた。
そこにいる人物に首を傾げる。
「キングじゃねぇか」
彼がアキハバラにいること自体珍しいことではない。が、『見つけた』とはどういうことだろうか。
「探してたんだ!」
「オイラを?」
「うん」
にこにこ笑う山野バンが自分に用とは一体なんだろうか。
「…またインフィニティネットに行け、とか?」
「まさか!」
「じゃぁ、なんの用だよ。またどっかがLBXの軍隊に襲われてんのか?」
「そんなことしょっちゅう起こったらやってられないよ!」
「ならなんだよ?」
バンはなにが嬉しいのかずっと頬を緩めている。
「今朝、アミが言ってたんだ!」
「川村アミが?」
「うん!今日は猫の日だって!」
「あばよ、キング」
「えぇ!?」
生憎だが今日は朝からずっとそのネタでからかわれていた。ヤマネコの名前も髪型も猫を模したものだから。マジョラムに「にゃーとは言わないのデスカー?」と言われたときはもう本気でぶん殴った。
だからヤマネコはそのネタがキライだ。なにが猫の日だ。ただの語呂合わせだろうが、これだからオタクはやってらんねぇな。と心中で毒吐く。
アキハバラが大好きだと言いハッカー軍団に加わっているヤマネコも立派なオタクの一人だがそこは気にしない。
キングまでそんなネタ引っ張って来ると思わなかった。と少し失望した気持ちで歩き出す。
「ちょ、待ってよ、ヤマネコ!」
キングの言葉に逆らえるはずもなく立ち止まるが振り返ってはやらない。
「あ、あの、いやな気分になったならごめん。よくわかんないけど」
「言っとくけどな、キング」
「な、なに…?」
「オイラ命令でも、絶対ににゃーとは言わないぜ!?」
振り向いて怒鳴るとバンがぽかんと間抜けな顔を晒している。
「………にゃあ…?」
うわ、こいつ地味に似合うな。と思わず復唱したバンを見ながらヤマネコはそんなことを思った。
「……よくわかんないけどさ…、はい、これ」
「……なんだよ、これ?」
渡された小さな箱。バンはにこりと笑い直した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ