□父親は公認
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山野バン。
俺にとってその名は欲望を体現したものだ。
出会ったそのときから欲しいと思った。
絶対俺のものにしてやると思った。
だから俺は着実にあいつを追い詰めるために、俺しか選べない状況にするために、確実にあいつを守る外堀を埋めて行った。

バンにとって俺の存在が自然であるように、バンの友人とは全員仲良くした。母親や幼馴染のアミにも俺の存在がそこにあることが当然だと思わせるために常にバンの傍にいた。
ときには手を繋いで、ときには抱きついて、それをしても不自然じゃない状況を選び、バンが俺と触れ合うことに疑問を持たないようにしっかりと刷り込むように俺はバンと触れ合った。

猫はネズミを食べれるとわかっているから好き勝手させる。同じだ。俺はバンを自由にさせた。いつか俺の手の内に堕ちて来るとわかっているから。
獣の牙を磨ぐように、俺はいつかに備えて準備を行う。
幸運なことにバンの親父さんは何故だか俺を気に入ってるらしい。俺とバンだけにLBXをくれた。
郷田からバンを守ったのは打算でもなんでもなく咄嗟だ。それがここまで事態を好転してくれるとは思わなかった。
最初にもらったLBXはハンター。
まさに俺だと思った。今か今かと獲物を待って確実に打ち抜くスナイパー。獲物の喉元にくらいつく獣。獲物の逃げ場を無くしてしまうハンター。
俺が会ったその瞬間にバンを獲物と定めたように、バンの現状を把握して逃げ場をなくしていくように、俺も生粋の狩る者だった。
我慢できずに飛び掛って警戒されるバカとは違う。逃げ場があることに気付かずに最後の最後で失敗する間抜けとも違う。

「カズ!今日の帰りキタジマ行かない?」
「おう、良いぜ」
「あら、私は誘ってくれないの?」
「そんなことないよ!アミも行こう!」
「最初に俺が誘われたからって拗ねんなよな、アミ」
「違うわよ!」

そう。俺は自然に溶け込んだ。幼馴染の絆に割り込めるくらい自然と。
バンの親父さんはもしかして俺のこと見抜いてるんだろうか、とハンターの話しを聞いて思った。だけど見抜いていてもなにもしないってことは別に問題視されなかった、もしくは黙認されたってことだ。なら俺がそれを気にすることはない。
後少し。明日か、明後日か、その次の日か、とにかくもうすぐでバンは俺の手の内に入って来る。自分でも知らずに、誰も気付かずに。
でもこのままでも良いかな。と最近になって思うようになった。俺がいて、バンがいて、アミがいて、ずっと三人でいられるのがなんだか理想になってしまっていた。当初の目的を変えてしまうのはハンター失格かもしれないが、想像以上に心地良い現状だったから、それでも良いか。なんて思ってさ。

それなのにあんな奴が現れたのは誤算だった。
「バン君」
「ジン!」
「君の姿が見えたから」
「せっかくだしバトルしようぜ」
「そうだ、今度ランキングバトルに挑まないかい?」
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