□守るためなら
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ミソラタウンにあるゲームセンターの扉が開いた。
「おい、ここは今ミソラ二中の生徒が入って来て良い場所じゃないぜ?」
「わかったらさっさと出て行きな、嬢ちゃん」
「…………」
下らない、と自分の耳当ての位置を直しながら川村アミは心の中で毒吐いた。
ゲームセンターがミソラ一中の不良が独占したのはついこの間のことである。ミソラ一中とミソラ二中の番長がそれぞれLBXバトルを行って、ミソラ二中の番長である郷田が負けたのである。アキハバラキングダムを一緒に勝ち進んだからと言って抗争を止めるつもりはないらしい。
本当に下らない。彼らなりのコミュニケーションの取り方なのかもしれないが、一見争っているように見えるせいで取り巻きどもが一々騒いで仕方ない。と、アミは思っている。
そもそも所詮は不良どもの勝手な争いに公共の場を賭けないで欲しいものだ。
「恐くて声も出ないのかぁ?」
殺してやろうかしら、と半分本気で思っていると声がかかった。
「なにやってるんだい?」
「仙道さん!」
アミを取り囲んでいた少年達が振り向いた。
「いや、ミソラ二中の奴が入って来ていたもんで…」
「ミソラ二中?」
「怪訝そうにしてないでまずはこいつらどこかに行かせてくれるかしら?」
言いながらわざわざ不良の影から出て行けば仙道が顔を引き攣らせた。
「げっ…」
「仙道さん?」
「あら、げっとはご挨拶ね。私もあんたなんかに好かれたくないから嬉しいわ」
「この女、さっきからずけずけと…!」
「やめな」
拳を振り上げた不良を止めたのは仙道だ。彼らが驚いている間に仙道は背を向けてアミをぞんざいに手招きした。
「こっちに来い、川村アミ」



「来たのが私だったから良かったけど、これがバンだったらどうするつもり?」
「バンには手を出さないように言ってある」
「理解できる頭があるのかしら」
冷めた声だ。バンの前では決してしないような冷たい表情。
「お前こそ感謝して欲しいもんだね」
「なにを?」
「どんなに凄腕のLBXプレイヤーでも暴力には敵わない。しかもあんたは女なんだ。あいつらに殴られて抵抗できるとは思えないねぇ」
つまり暴力を振るわれる前に助けてやったんだと言いたいのだろう、この男は。アミは目を細める。
「私はあんな奴らに負けないわ」
「ただの喧嘩で?有り得ない」
「そうね。確かにあいつらに集団で襲い掛かられたら私だって無事では済まない。でもね、私はあいつらよりも強いのよ」
音もなくパンドラが鞄から出て来てアミの肩に乗った。
「あいつらが拳を振り上げて私を殴るよりも、私のパンドラがあいつらの目に刃を突き刺す方が速い」
「…………恐ろしい女」
彼女は自分の身を守るためにその場にいる奴らを全員失明させても良いと言い張った。死なないだけマシだろうと言いたいのかもしれない。
「とにかく!手下の奴らのバカな行為の責任はあんたが取るべきよ」
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