□君は渡さない
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「ねぇねぇ、ここは?」
「バトルしてよ!」
「一緒に行こうよ」

ヒロはイライラしていた。そりゃぁもうイライラしていた。
思わず貧乏ゆすりをしてしまう程苛立っていた。
むぅ、と口を尖らせて目の前でLBXの調整を行っているバンとランに視線をやる。
「ラン、そこはさ…」
「あ、そっか。ありがと!」
「…どうしたんだ、ヒロ?」
ヒロがじっと見ていることに驚いたのか、バンはきょとんと聞いてくる。気付いてくれたことが嬉しくて、ヒロは笑顔になって口を開いた。
「バンさ…」
「それより!この前ミネルバの反応がちょっと遅れたの。どうすれば良いかな?」
「反応が遅れた?…ちょっと見せてくれないか」
バンの注意はあっさりとLBXに向いてしまった。

被せた。

ヒロはきりっと目を吊り上げる。
(今絶対にわざと被せて来た…!)
ランを睨んで見ると、こちらの視線に気付いた彼女がヒロに向かって得意げに嘲笑った。

そう。彼女なのだ。花咲ラン。彼女がヒロのイライラの原因だ。主悪の根源である。
ランが仲間に入ってから彼女はバンにべったりだ。シーカーの本部に入ればバンの姿を探し、誰かと会話していればLBXをネタに割り込み、暇があればバトルに誘い、ディテクターの見回りには必ずバンと共に出るのだ。
驚く程自然に彼女はバンの隣に居座るようになっていた。
今だってそうだ。バンがヒロに話しかけたと言うのに、あっさりと会話を遮り構ってもらっている。バンがLBXを何よりも優先すると知っていて、それを出してくるのがあざとい。
「バン、ちょっと良いか」
「拓也さん、はい。……ごめんな、ラン。ちょっと行ってくる」
「ううん、仕方ないよ。後で見てねー」
拓也に呼ばれてバンが部屋を出て行く。
そこで今日初めてヒロとランは二人っきりになった。
「………ランさん」
「ん、なに?」
ミネルバを組み立てて動かしているランは、ちっともヒロのことには興味がありませんと言わんばかりだ。
「あなたどういうつもりなんですか?」
「どういうって?」
「とぼけないで下さい!」
ヒロが音を立てて立ち上がった。

「あなたが来てから僕とバンさんの時間が著しく減ったんですよ!!」

詰まる所不満はそれ一点だった。
バンと二人で過ごす時間がめっきり減ったのだ。もっと言えばバンが構ってくれなくなった。
「僕がバンさんをバトルに誘うとすれば狙ったように被せて来るし!僕が会話していればLBXについての質問だとか言ってバンさんを掻っ攫うし!大体ランさん、見回りはバンさんと行くばっかりじゃないですか!」
「…それって悪いことかな?」
ランがミネルバの動きを止めてヒロを見た。
「それならあたしだって文句ある。あたしがバトルしてると絶対に乱入して来る!あたしが質問してるのに当然のように傍にいる!大体見回りにしたって、ヒロはあたしより早く彼に会ってるんだからちょっとは譲ってくれても良いじゃない!」
「なんてこと言うんですか!?最近ランさんのせいでろくに会話してないんですよ!?」
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