□屍に埋もれた平和を探して
1ページ/6ページ

ライターで煙草に火をつける。すっとそれを口元へ持って行こうとしたら銜える寸前に横から煙草を奪われた。
視線を動かすと珍しく怒ったような顔をするバンに苦笑する。
「煙草、身体に悪いって言ってるだろ」
むぅっと膨れるバンを見てソファーに座っていたカズがくつくつと喉で笑い、なにかを思いついたように二人を見た。
「そういやレックスは葉巻吸わないのか?そっちの方がサマになるぜ」
「カズ!」
咎めるようなバンの声にカズは慌てて明後日の方を向いた。
「生憎葉巻は好きになれなくてな」
レックスは穏やかに笑いながら懐を探る。
「………あんまり吸わないでよ。病気になったら、嫌だし…」
バンの哀しそうな表情に二本目を取り出そうとしていたレックスは罪悪感に負けて仕舞った。
一連の様子を聞き流していたアミが資料から目を離す。
「バン、カズ」
「なに、アミ」
「良い?まず今回の会談に、バンが扉前、カズが隣のビルの屋上で待機」
「おい、それを話すべきなのはボスである俺じゃないのか」
「またそれかよ…。さすがにもう覚えたって」
肩を竦めてソファに身を沈めるカズをじろりとアミが睨んだ。レックスに関してはもう無視だ。
「そう言って毎回わけわかんないことすんのは誰よ。何回私達の邪魔したのよ」
「うっ!……い、いや、お前ら越しに敵がいたから」
「だからってその敵の手前に私達がいるんだから撃てば私達に当たるのは当たり前でしょう!」
「アミ、俺大丈夫だよ。ちゃんと俺が全部倒すから」
「それじゃダメなの。とにかく今回の会談はきっちり仕事してもらうからね」
「でもアミなら会談成功させるだろ?交渉上手いしな」
カズの軽い言葉にアミは小さな溜息を吐いた。
「どうだか。交渉を持ちかけて来たのはあっちだけど、結構喧嘩腰だったから」
ばさりと資料をテーブルに投げ出しアミはスカートを捌きながら立ち上がる。
「さぁ、準備は良い?今から会談に行くわよ!役割復唱!」
びしっとバンを指差すと嬉しそうに手を上げてバンは笑う。
「はい!会談の出入り口で待機!抗争になった場合突入!ばしばし敵をなぎ倒すよ!」
どんなに可愛らしい顔をしていてもこのファミリーで一番の攻撃力を持つ少年は手を下ろした。
「よくできました。カズ」
「えっと…隣のビルで待機。交渉決裂ならバンとアミの援護。だよな」
銃撃戦であればどんな距離でも的は外さない腕を持つ少年は床に置いてあったライフルのケースを持ち上げる。
「よろしい。それじゃレックス、出撃許可を」
「すっかりまとめ役が板に着いたな」
「やめてよ」
恥ずかしそうに頬を染めてアミは早々に部屋を出た。
「行って来ます、レックス!」
「今日も上手く行くよう願っててくれよ!」
バンとカズも笑いながらそれに続く。ついに一人になった部屋でレックスは苦笑しながら一人ごちた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ