□知らない過去を捨てて行く
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「俺達をどうするつもり!?」
「世界にはお前達が必要なんだ!お前達を、ただ野放しになんてできるわけない!」
「いったいどういう………」
薬品の匂いがした。ジンがもがくのが見えるが、朦朧とした意識の中、それ以上のことを感知できない。ぼんやりとしながらも、目を瞑る前にバンは必死で拓也を見る。
「……どう、して………、たくや、さ…」





がばり、と起き上る。
ごしごしと目を擦りながらバンはベッドから出た。
「…変な夢見た」
憮然とした表情で一人部屋の中で呟く。ベッドから出て顔を部屋の奥にある洗面所で顔を洗う。
ようやくすっきりした頭で、夢のことを頭の片隅に追いやり服を着替える。ハートが矢で射抜かれた柄がプリントしてある上着を着て、いつものように鞄を肩にかけた。
嘘ばかりな世の中で、夢の中だとしても裏切られたと感じたことにバンは苦笑する。今の自分にそんな感情あって良いはずがないのに、夢の中の自分はずいぶんと幼い。
妙に現実味のある夢を思い出すようにCCMを手に取った。テーブルの上に置いてある二体のLBXを動き出す。
「行くぞ、アキレス、オーディーン」
くるりと宙返りしたり素振りで動きを尖らせる。朝起きてまずすることは自分のLBXの訓練だ。
しばらく動かしていると扉がノックされて、バンは動きを止めた。
「…バン君、起きている?」
しかしそれが親しいものの声だとわかりバンは肩から力を抜きドアを開く。入口には白黒の髪を持った赤い目の少年が立っていた。
「おはよう、バン君」
「おはよう、ジン。早いな」
「ああ。まだ朝早くだから迷惑だと思ったんだが、どうにも寝付けなくて…」
「良いよ。俺も今日は妙に目覚めがいいんだ」
ジンを部屋に招き入れ扉を閉じる。テーブルを見てジンが言った。
「LBXの操作を?」
「うん。いつなにが起こっても良いように」
「そういえば僕らにそれぞれ新しいLBXが製作されているらしい」
「ほんとか?別に今は充分だと思うけど」
「ユウヤが一体しか持っていないから最初はユウヤのだけ作る予定だったが、最新型アーマーフレームを使うならせっかくなら僕らの分も。と言うことだと思う」
「なるほどね。ユウヤはジャッジしか持ってないっけ」
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