企画物

□世界を終わらせたかったのは誰か
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「修理用具は持っているな?」
「ああ!さっそく直して来る!」
レックスはそう言った瞬間に走り出した。


バトルブースでがちゃがちゃとLBXを分解して行く。キラードロイドによって壊れた部品を全て交換してもう一度組み立て直した。最強のLBX使いと呼ばれたレックスにとってはあまりにも容易なことだ。
「………キラードロイドは見直しだな」
壊し方が甘い。これならば簡単に直せてしまう。と呟きながらCCMを覗いた。
「やぁ、レックス」
背後から自分を呼ぶ声がしたがレックスはそれを無視してLBXを動かす。
「聞いているのか?」
反応のずれを見つけて再びレックスはLBXを分解する。背後に視線をやることもしない。
「レックス」
もう一度動かせば今度は調子が良かった。床に置いてある『LBX』と書かれた白い鞄を掴んで中から更に自分の愛機を取り出す。
「レックス!」
肩を掴まれて無理に振り向かされる。レックスは眉を寄せたが包帯で隠れたため表情の変化は誰にもわからなかっただろう。周囲にはこちらを恐る恐る伺っているテストプレイヤー達。その中で一番の実力を持った囚人服を着た少年がレックスの肩を掴んでいた。
「…………」
Dr.マミーとの会話が嘘のように口を閉ざしたレックスはただ少年を見詰める。キリト、と言う名前だと言うことはなんとなく覚えていた。実力は本物で、他のテストプレイヤーと決して馴れ合わないことも知っている。しかしそれ以上のことは知らない。妙に自分に突っかかって来る奴程度の認識しか彼にはなかった。
面倒な奴に捕まった。と思い立ち上がる。早々に逃げ出した方が良さそうだ。
「今日こそ戦ってもらおうか」
「………」
肩を掴む手を振り払い部屋を出て行く。当然のように背後に着いて来るキリトに怒りを覚えながら足を速めた。なんとかキリトを撒こうと意味もなく歩き続けたが、後ろには平然とキリトが立っていてレックスは溜息を吐いてようやく足を止める。
「ようやく戦う気になったかい?」
「………戦いたいならキラードロイドとでも戦えばいい」
Dr.マミーも喜ぶ。と言えば思い出したくないのかキリトは顔を歪める。
「お前と戦いたいと言ってるんだ」
「…興味ない」
「キラードロイドに勝つためにも、もっと強い奴と戦わなくちゃいけないんだ」
「ありえない」
きっぱりとレックスは言った。
「キラードロイドに勝つことは不可能だ。少なくともお前には」
「……なら誰なら勝てると言うんだい?君か?」
「…………誰にも勝てない。そうじゃなきゃいけない」
俺とあいつの二人なら、あるいは。と浮かんだ言葉の続きをそれ以上考えないようにレックスは頭を振り、すぐにその場を離れることにした。やはり人と会話するものじゃない。余計なことばかり思い出してしまう。
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